4-5
土曜日の朝、暑さで目が覚めたのですが、夏休みということもあり意地でも二度寝を敢行することにしました。その結果は寝付けずゴロゴロするだけになったので、気晴らしに散歩にでも行きましょう。引き出しの一番上にある服を取り出し、朝の身支度です。
出かける直前に両親から、お昼はいないから勝手にするよう言われたので、散歩から買い物に変更になりました。外へ出てみると風がある分涼しく感じますね。エアコンを付ければいいだけですが、月曜の散歩以外はずっと寝てるのも同然なので、ちょうどいいですね。買い物のついでにオチールを補充する必要がありますし。
イベント開始直後にはお世話になったので感謝の気持ちを込めながらもいつもと同じ量を手に……おや、これは夏限定のミントオチールではありませんか。それではミントオチールを買い込むことにしましょう。通常のオチールよりも出が悪いらしいですから。
後は今日のお昼ですが……、おや、伊織からメールです。起きているなら私の部屋に来てもいいかと聞かれたので、お昼の買い物中と返信するのですが、せっかくなので伊織も誘いましょう。
そんなわけで帰る時に声を掛けることになり、今日のお昼は私と葵と伊織の三人です。メニューは冷麦です。ええ、もちろん、色付きの麺は譲りません。あれは姉の特権ですから。
伊織に声をかけ、家に入ると、私が緑茶とミントオチールを用意している間に伊織はいつかぶりに畳んである服を並べ替えていました。
「まったく、ちゃんと組み合わせとか考えてよね」
「学校がある時は制服で済むからいいよね」
特におかしくなる組み合わせが出来る服はないと言われたのですが、まれに私の服の順番を整えにやってきます。まぁ、伊織の気が向いたらなので、数ヶ月に一度ですが。
「それで、どしたの?」
「葵から城に入ったかもって聞いたから、一応聞いておこうと思って」
ああ、そういうことですか。では簡単に話しておきましょう。
「夏イベのお城のことね。特に珍しいのはなかったけど、手形貰うクエストの途中で装備切り替え欄ってのが開放されたよ」
「何それ」
伊織が食いついたので詳しく話すことになりました。まぁ、クエストを順番にこなした結果なので特別なことはしていませんが、新しく何かが開放されると聞けば、早く開放したくなりますからね。
後は、念の為と言われ、炊事場でのクエストについても吐かされました。まぁ、他にもいろいろありそうですが。
「それじゃ、早めに開放した方がよさそうだね。でも、深夜にイベントダンジョンが開放されたらしいから、そっちも行きたいんだよね」
おや? イベDとな?
「どんなダンジョンなの?」
「公式HPによると、1階1部屋で、出現したMOBを倒すと次の階に進むか出るか選べるんだけど、再入場は途中からで、同じ階層までクリアしてる人同士でパーティーも組めるらしいよ」
「階層合わせれば次の挑戦の時に合流出来るってこと?」
「そんな感じだと思うよ」
なるほど。始めは一人で挑んで、無理そうになったら他の人と組むということが出来るわけですか。早い段階で進行を合わせるのは楽だと思いますが、かなり進んでからだと詰みかねませんね。
「後で試しに行ってみようかな」
「一人で挑むならどこまで進んだか教えてね。途中で拾えるようにしないといけないから」
「んー、そん時はお願いね」
だったら最初っから一緒に行けばいいのですが、伊織達には伊織達の都合があるのでとりあえずは別行動です。
お昼の準備が出来たので伊織に葵を呼びに行ってもらったのですが、予想外にもすぐに一緒に戻って来ました。ログインでもしていて時間がかかると思ったのですが。
それではお昼にしましょう。いただきます。
ずるずる。
………………
…………
……
ごちそうさま。
後片付けは葵の担当になったので、私はお茶を三人分いれ、食後のミントオチールを出してゆっくりします。
「さて、それじゃあクラン隠れ家の極秘リアル会議をしようか」
まるでどこかの最高司令官のようにテーブルに肘を付きながら顔の前で手を組んでいます。さて、どこから突っ込みましょうか。
「ねぇ伊織、いつもこうなの?」
「たまにテキトーな番号付けるよ」
どうやら二人でよく会議をしているようです。私はクラン運営には向かないので関わりませんが、いつも苦労を掛けますねぇ。
「それで、議題は何?」
「……ああ。イベントの進行具合の確認と情報のすり合わせだ。城には入れたんだろ」
「さっき伊織にも言ったけど入れたよ」
伊織にした話を今度は葵にすることになりました。元々話すつもりだったので問題はありませんが、一回で済ませればよかったですね。
話が終わると、葵は何かを考え始めました。
「なるほどね。それじゃあクランの分は巾着作っとくか。イベントダンジョンの情報、少し出てきたけど聞くか?」
「始めは事前情報なしで行ってみたいかな」
「私達もある程度はなしで行ってみようかな」
「そうか。ま、ある程度進んだら情報共有だな。後、19日のイベント、詳細くらいは見とけよ」
「あーうん。一期一会って大事だよね」
ある程度の物販がある。それだけわかっていれば十分です。3Dプリンタで作ったフィギュアとかは申し込んでいませんし。
「まぁいいさ。それで、何を隠してんだ?」
……!
「えーと、あー、そのー、……何のこと?」
ふう危ない。何を根拠に言っているかはわかりませんが、誤魔化しましたよ。ところで、何のことでしょうか。
「茜、まだ何か隠してるの? てっきりさっきので終わったと思ってたのに」
「まったく、さっさと吐け」
いやー、私はちゃんと誤魔化しましたし、そもそも――。
「どれのこと?」
おっと、口に出してしまいました。これはまずいですよ。
「葵、どうする?」
「いや……、新しい街とかイベントとかで何か見つけてるだろうと思って聞いたけど、これは予想外だ。どれってことは、最低三個はあるってことだろ」
おやおや、葵は私にカマをかけたわけですか。見事に引っかかってしまいましたね。
「あーおーいー、お姉様にそんなことをしてタダで済むと思ってるの?」
ふっふっふ、これはお仕置きが必要ですよ。
「どうせ見つけたけど何もしてないとか、凄くないと思って放置してるとか、そもそも大勢が知らないとは思ってないとか、そんなことだろ。そういうのはちゃんと聞かないと答えねーんだから、オチールでも食って情報を出せ」
いや、そのミントオチール私が出したやつですよ。もぐもぐ。
「茜、新しいクエスト、何か受けた?」
「あー、作ってから見せびらかそうと思ってたけど、造船クエスト受けたよ」
一つ目の情報を出しましたが、水の都風の街ですし、あってもおかしくはないと思います。そのため、イベント初日にイベントをサボって街でゆっくりしていたのを知られないために黙っていただけです。完成してクエストの流れを理解してからなら、文句は言われないはずですし。……それに、いつ受けたかを言う必要はありませんから。
「造船クエストな。めぼしい造船所は大きいクランが受けてるから、順番待ちで長蛇の列が出来てんだよな。同じクランなら優先して受けられるはずだから、後で教えてくれ」
「りょーかい」
そんなことになってたんですね。伊織からの補足情報で、クランの規模によって一度に作れる数が決まっているとかで、独占は出来ないそうです。ただ、私がクエストを受注したところには人影がなかったはずですが。
「クエストはそれだけか?」
「そだよ。伊織には言ったけど、イベントクエストは街の反復クエストと城に入るのと、城の炊事場のしか受けてないからね」
「そう。じゃあ、新しいスキルか、アーツとか魔法とか、覚えた?」
そういえば二つほどありますね。大したものではないので忘れていました。
「行動補正(水辺)とステアー覚えた」
「泳ぐのか?」
そういう系統なら水辺ではなく水中ですよね。なので、かすってもおらず、大外れです。
「格闘のアビリティで、行動時に水の抵抗が減るんだってさ。ステアーは属性を選べて、魔法で階段を作れるの」
「私としてはステアーが気になるんだけど、どうやって覚えたの?」
「ロックウォールで階段作った」
そういえば、ロックウォールを足場にしたことは多々あるのですが。覚えたときとは何が違ったのでしょうか。それとも回数が関係しているのでしょうか。
「茜はいつもロックウォールをどんな風に使ってるの?」
「いつもはこう、しゃがんで足元を指定して踏み台にしてる」
「なぁ、普通は壁にしてMOBを分断したり、接近を防いだりするのに使うよな」
そんな使い方をしたことはありませんよ。
「いつもってことは、回数かな?」
「んー、どうだろ。覚えた時は屋根から降りられないNPCの足場にしたから、条件が違うのかもしれないし。まぁ、よくわかんない。あ、行動補正は水辺で素足で遊んでたら取れたよ」
クランメンバーの中に私以外で格闘を取っている人はいないので、そこまで重要な情報ではないはずです。そのため、最後に付け足すくらいで十分でしょう。
実際にステアーのことばかり聞かれましたし。
「他に何かある? アイテムとか、素材とか……」
流石に時雨もこれ以上はないと思っているのか、聞き方が弱々しいですね。私も腕を組んで考えています。んー。
「アイテムって言っても、冒険者ギルドで新茶を買ったくらいだしなー。精神系状態異常耐性UPが付いてるけど、流石にみんな知ってるでしょ」
おや? 葵と伊織が固まっています。どうしたのでしょうか?
「それだ……。はぁ、フラグ管理の商品かよ」
「状態異常耐性が上がるアイテムってことは、今回のイベントで何かある可能性があるね」
「いやいや、普通に冒険者ギルドの売店で売ってるんだよ」
「俺が見た限り、あそこのラインナップはどこも変わらねーよ」
「新茶買う前に何したか教えてもらっていい?」
「んー」
あれは大工さんの店でお茶とお菓子をごちそうになった時に聞いたので、それでしょうか。とりあえず思い出しながら詳しく話し、二人には納得してもらいました。
まったく、予想外ですよ。
葵も伊織もログインしたら試してみると言っていましたが、どうなることやら。まぁ、これ以上は埃もでませんよ。
とりあえず自由行動の時間は確保したので、ログインしたらイベントダンジョンに向かう予定です。さてさて、どんなダンジョンが待っているのやら。
ログインしました。もちろん目的はイベントダンジョンですが、その前に日課をこなしましょう。今はこの作業は、髪は緑がかった黒髪ロングでゴシック系の服を来ているグリモアと並んで行っているのですが、作ってた総数が半分になっているとは思えませんね。まさかとは思いますが、販売総数が増えている可能性があります。
まぁ、総数よりもグリモアが熱くないのかが気になりますね。黒色の布が多く、どこが水属性なのかわかりませんし。
「あ、グリモア、時雨に新しく覚えた地魔法の取得方法教えてあるけど、わかんなかったら言ってね」
「汝、我にどのような対価を求める?」
「んー、ただの階段を作る魔法だから、いらないよ」
「しかし……」
ふむ、そもそも壁を足場にするのは基本ですが、今までそんなことをする機会がなかったのでしょう。私も完全に偶然ですし。
「じゃあ、魔術書のスキルレベル上げるの、時間があったら手伝ってよ。スペルスクロール使えれば楽に上げられそうだし」
「うむ。汝に借りた手をそのまま返すことになるが、そう望むのであれば」
そりゃグリモアが魔法陣を上げたのと同じ手段を取れるのを待っていましたから。さて、今日の分も終わったので、MPが回復したらイベントダンジョンに行きましょう。
「そんじゃ、お先にー」
「汝の健闘を祈る」
グリモアに見送られながらクランハウスを後にし、ナツエドのイベントダンジョンへと向かいます。
イベントダンジョンは冒険者ギルドのある中央広場と北の城の間にある櫓広場という場所にあります。正確には、櫓広場にある祭りの櫓がイベントダンジョンになっています。どっからどう見ても盆踊りの櫓ですが、布がめくれて入り口になっているので、あきらかに何かあると言わんばかりの見た目です。
まぁ、あそこから入らずとも、櫓広場に来れば、メニューからイベントダンジョンに入れます。
イベントダンジョンに入る操作をすると警告が出ました。他のプレイヤーと合流するには一度外に出る必要があり、同じ進行度のプレイヤー同士でなければパーティーで挑めないなど、既に知っている情報ばかりです。ちなみに、イベントダンジョンを逆走することは出来ませんが、負けてもまた同じ階に挑戦できるので、安心してくれと書いてあります。ああ、MOBからのドロップは無いそうです。そのかわり、各階ごとにクリア時に決まったものが貰えるので、運による入手アイテムの変化はありません。
それではさっそく入りましょう。
視界が暗転し、イベントダンジョン【夏の櫓】へと入りました。木造のような部屋で、四方を囲む壁には提灯がさがっています。広さはそこそこというか、教室4つ分くらいですかね。場合によっては走り回って延々と逃げられそうなきもします。まぁ、障害物がないので追いつかれるとは思いますが。
ちなみに、部屋の中央には【1階】と30秒のカウントダウンの文字が浮かんでいます。あれが0になるとMOBが出現しますが、今すぐ出現させる開始ボタンもあります。今はバフ系のスキルくらいしか使えなくされているようなので、完全に準備期間ですね。
それでは始めましょう。
メニューから開始を選ぶと、中央のカウントダウンが【開始】に変化し、エドッグが出現しました。フィールドのエドッグとは違い、アクティブなので、すぐに向かってきました。
……これ、まずいですよ。
まずは【バリア】を発動し、そのディレイが終わるとすぐにライトニングランスの準備をします。フィールドと違うのであれば、同じ様に対処するための状況に持ち込むだけです。
「【ライトニングランス】」
もちろん【閃き】も使っています。4つの魔法陣を同時に描けるようになったのでライトニングランスを4発叩き込みました。1発増えたことにより行動阻害の効果が微妙に伸びている気もしますが、純粋にダメージ量から弱っただけかもしれません。まぁ、次の魔法が間に合うほどの時間ではないので、左腕を盾にして噛み付かせ、そのまま体全体で強引に押さえ付け、【メタルランス】を叩き込みました。
倒すと中央に【完了】の文字が浮かび、60秒のカウントダウンが始まりました。この間に外へ出るか次へ進むかを決めるのですが、MPが少し回復していますね。連続で挑めるようにするためでしょう。
ちなみに、報酬は小判1枚でした。
とりあえず、バリアの修理をしたら維持コストもあるので、さっさと次へ進みましょう。
二度目の暗転を体験し、2階へと出現しました。1階との違いは中央の表記が【2階】になっていることだけです。
すぐに開始を押すと今度はエドーレムが出現しました。なるほど、そういうことですか。理解しましたよ。私はバリアを解除し、【閃き】を使ってから【アイスブラスト】の魔法陣を三つ描き始めました。エドーレムは足が遅いので悠々と魔法を使うことが出来ます。アイスブラストの次にエアーブラストを使い倒しました。普段から一対一を心がけている私には、簡単でしたね。
順番から考えて次はエドレントでしょうから、射程に注意すれば何の問題もありません。
2階の報酬である小判2枚も貰ったので、次へ行きましょう。
3階の表示とカウントダウンが始まっていますが、すぐに開始ボタンを押しました。中央にポリゴンが現れ、そのままエドレントへと変化しました。フィールドに出現する個体と同じ様に腕のように太い枝をシャドーボクシングをするように動かすと、枝の先に生い茂っている葉が舞、私の方へ飛んできます。前にも見たことがある攻撃方法なので何の問題もなく避け、魔法の準備をします。このエドレントからはドロップがないので大盤振る舞いしましょう。
「【ファイアストーム】」
同じ魔法陣を4つ描き、炎の竜巻がエドレントをその中へ閉じ込めました。特に断末魔などは聞こえませんが、薄っすらと見えるシルエットが段々と崩れているようです。そして、炎の竜巻が消えるとそこには何もありませんでした。
3階をクリアしたのでMPも少し回復しましたが、それでも全回復はしていません。次はエドッグだと思うので、一度外へ出ましょう。メニューから撤退を選択し、櫓広場へと戻ってきました。
外に出た理由は簡単です。少し減っているMPと満腹度を回復するためです。座れそうな場所に腰掛けて焼き魚を食べると、すぐに回復しました。櫓広場には多くの露店がありますが、遠目に見る限り、食料や回復薬が主だった内容のようです。
さて、次は順番で言えばエドッグだと思いますが、果たして1体だけでしょうか。可能性としては2体や、エドッグと何かということもありえます。後は、パターンとして、同時と順番の二種類ですね。いえ、時間差というのもありますが、それはないと思いたいですね。
それでは全回復したのでイベントダンジョンに再突入です。3階をクリアして外に出たので次は4階です。30秒の準備期間でもバリアは使えるので、発動してから開始ボタンを押します。ポチッとな。
中央の文字が消えるのと同時にエドッグが出現し、私に向かって走り始めました。それに対して私は閃きを使ってからライトニングランスの魔法陣を4つ描き始めました。これで倒せればいいのですが、流石に無理でしょう。
「【ライトニングランス】」
雷の槍を4本放ちました。それらがエドッグを貫くと、雷属性の行動阻害効果を受け、動きが止まりました。流石にディレイが終わる頃には動き始めていますが、わかっていたことなので慌てません。いつもの様に左腕を盾にするために前に出しました。ここで噛み付きではなく体当たりを選択されると困りますが、もうメタルランスの魔法陣は描き始めているので、体当たりだった時のことはそれを受けてから考えましょう。そういえば、エドッグのHPが残り少ないのか、動きに精彩を欠いていますね。もう少し遅ければ歩いていると言ってもいいくらいです。まぁ、魔法陣を描き終わらなかったので、あまり意味はありませんね。
エドッグが弱りながらもしっかりと噛み付こうとしてくれたので、バリアが覆っている左腕に噛み付かせそのまま押さえ付けました。そういえば、魔法陣を描き終わった状態なら動かせるんですよね。前は手のひらに移動しましたけど、今回は別の場所です。バリアへのMP供給を絶やさないように注意しながら遅延発動を使い、描き終わった魔法陣を小さくしながら移動します。目的の場所は左腕、それも、エドッグが噛み付いているその場所へです。
「【メタルランス】」
エドッグの口の中へ向けて鉄の槍を4本放ちました。まぁ、命中した時点でHPが減りはじめ、ポリゴンとなって消えるので、こう、グロテスクなことにはならないわけですね。
『WAN』
おや、何でしょう……。あ。
新しく出現したエドッグが私の方へ走ってきます。どうやら連戦のようですね。問題があるとすれば、それはディレイがまだ終わっていないことです。ええ、あきらかに過剰だとわかっていてもメタルランスを4発撃ったので、4倍のディレイがありますから。
まぁ、同じ手を使えばいいだけなので、何も苦労はしません。ディレイが終わるのを待ってライトニングランスの準備を……。
「ぐぇ」
左腕を盾にしたはずが、その腕には目もくれず思いっきり体当りしてきました。バリアのお陰で耐えました。ディレイは体当たりを受ける直前に終わっていたので、ここは魔法ではなく別の手を使います。
何せ、エドッグがまだ攻撃範囲にいますから。
「【マジックスィング】」
ええ、魔法使いにはこれがあるんですよ。十分に杖の届く範囲でしたし、この手のアーツは発動すれば自動で動いてくれるのでとても楽です。一応、任意でも動かせるらしいのですが、近距離戦闘が苦手な私には自動が合っています。
『KYAN』
エドッグが可愛らしい鳴き声を上げながら吹き飛びました。前衛職ならここから追撃するのでしょうが、私は違います。純粋な後衛職ですから。
閃きを発動し、魔法陣を描き始めます。吹き飛んでから態勢を整えたエドッグは近付けば危ないと学習したのか、距離をとって様子を見ています。私にとっては一番いい距離なので、このまま警戒していて欲しいですね。おっと。
「【ライトニングランス】」
4つの魔法陣を描き終えたのですぐに雷の槍を放ちました。ライトニングランスは見てから避けられるような速度ではないので、警戒していたエドッグも大人しくくらうしかなく、そのままポリゴンとなって消えました。
報酬の小判4枚を確認し、外へ出ます。次はエドーレムと2連戦だと思いますが、MPの回復をしておきたいですから。
外へ出てMPを回復するために休んでいると、次に挑戦する階層ごとにパーティーを募集する一団がいました。どうやら櫓広場の一部を使っているようです。実際、ここであればパーティーを作ってすぐにダンジョンに挑めるので、ちょうどいい場所ですね。
休憩の後、5階ではエドーレムと2連戦、6階ではエドレントと2連戦でしたが、何の問題もなく倒すことが出来ました。今までの流れで行くと次の7階はエドッグと3連戦になりかねないのでここまでにしましょう。時雨に6階まで倒したと連絡をいれ、ちょうどいい時間なのでログアウトです。
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