3-13
翌日、待ち合わせよりも少し早めにログインして日課をこなしています。刻印やら調合やらをしていると、次第にクランメンバーが集まってきました。ちなみに、グリモアも早めに来て刻印をしてます。順調にスキルレベルを上げているようでなによりです。
「よし、全員揃ったし行くか」
ハヅチが全員揃っていることを確認するとサウフィフへと移動を開始しました。
サウフィフではアイリスPTとハヅチPTに分かれますが、私はいつもの様にアイリスPTに入り込みます。
街自体の観光は一度しているのですが、水の都を意識していると思われるこの街は綺麗ですね。水路もありますし、そこを船で移動しているNPCもいるので、造船所とかありそうですね。
それにしても、一つ残念なことがあります。季節が夏で、水辺なのですから、こう水遊びが出来る場所があってもいいのに。
「むー」
「どうした、リーゼロッテ?」
おや、残念がっていたらアイリスに気付かれてしまいました。
「いやー、この風景もいいけど、夏場だから海系の街でもよかったのになーって」
「……海、いい」
おや、リッカが同意してくれましたね。装備をハヅチに頼んだせいでくノ一風の装備になっていますが、これはこれでいいものです。
「そういえば、前に観光した時、もっと南に行けば海があるってNPCから聞いたよ」
「ああ、そういえばそんな話があったな。この水路……、川を下って行けば海に出るそうだ」
川は最終的に海に行くはずですが、ゲームなのでそうなっていない可能性もある中、この川は海と繋がっているのが確定しているようです。海は海でクエストが多そうですね。
NPCと話しながら歩いていますが、なんとも言えない手応えです。クエストはありそうですが、前提を満たしていないため受注できない、そういう感じがします。
「あ、ねぇねぇ、みんな、あそこの橋、壊れてるよ」
モニカが示した先には壊れているというよりも修復途中の橋がありました。ただ、私も含めてモニカ以外の全員があまり乗り気ではありません。ええ、ああいった場所にあるクエストというのは、素材を持って来いならいいのですが、スキルを使って修繕に協力しろというものがあります。対応したスキルがない私達としては避けたいクエストですね。
「そこの人ー、その橋どうしたの?」
避けたいと思っている間にモニカが突撃してしまいました。まぁ、受けておいて放置ということも出来るので、気にするのはやめましょうかね。
「ああこれか。少し前に湖が荒れてな、壊れちまったんだ。こっち側にある素材だけじゃ足りなくてな。向こう側から材料を運んでるんだが、壊れちまった橋が多くて、手が足らないんだよ」
ピコン!
――――クランクエスト【橋の修理を手伝おう】が開始されました――――
修復素材を届ける 【0/12】
――――――――――――――――――――――――――――――――
あ、始まってしまいました。けれど、始めて見る種類ですね。まぁ、あっても不思議ではありませんが、ここは説明出来そうな人を見つめましょう。
「それじゃあ、頼むよ」
視界の外でモニカがNPCと何かを話していたようで、いつの間にかクエストを受注して詳しい話も聞き終わっていました。
「みんなー、クエストあったよ。どうにかして向こう側に行って材料を持ってきて欲しいってさ」
「そうか。それで、そのどうにかしての部分はどうなっているんだ?」
「え、ああ……」
アイリスがモニカから詳しく話を聞くために移動していると、時雨が近付いてきました。おそらく先程から期待の眼差しで見つめ続けている私の疑問に答えてくれるのでしょう。
「……ちょっと答えにくいな。えーと、クラン単位のクエストでね、ある程度の期間でクランの所属人数が最も多かった時が基準になるから、私達の場合、12人だから、12個なんだと思うよ」
「ふむふむ、崩壊した直後のクランとかだったら最悪だね」
「クランクエストってクランハウスのアップグレードで発生するって聞いてたけど、他にもあったんだね」
所属人数の最大数を増やすクエストなどがあるのでしょう。大型クランだと初期状態で30人ですが、よくあるMMOでは100人とかいるって聞きますし。
「よし、わかったぞ。かなり遠回りになるが、使える橋があるそうだ。後は、船とかで向こう側にいってもいいそうだ」
要するに、方法は任せるということらしいです。ただ、報酬がよくわからないということで、何とも言えない状況です。
「まぁ、クエスト探しだから、周りながらでいっか。クランクエストだから、通知はいってると思うけど、ハヅチ達にも伝えとくね」
ハヅチと時雨は見付けたクエストの情報を共有するための作業をしていますが、そろそろ私もクランの機能をしっかりと把握した方がいいんでしょうか。大なり小なり……、大やら小やらほとんど任せっぱなしですし。まぁ、言われたらにしましょう。
その後もしばらく散策を続け、ある程度のクエストを発見したのですが。
「向こうへ行けないぞー」
どうやらあのクエストの目的地へ行くにはハヅチ達に任せた方を経由しなければいけないようです。つまり、本当にかなりの遠回りをしなければいけません。
「NPCと交渉して渡らせて貰う?」
「水路を使っているNPCはほどんど荷物を運んでいるから、交渉に応じてくれるかどうか」
このゲームは異世界を丸々一個シミュレートしているわけではありませんが、ある程度は生活している様に見せているので、全てを引き受けてくれるわけではありません。そのため、水路を使っているのが宅配業者か何かなら、望みは薄いでしょう。
「ふむ、この地の理は理解した。我らが目指すべきはトラゲットであろう」
トラゲット? 何処かで聞いた気もしますが、何でしたっけ。
「それってどこにあるの?」
「うむ、その者達は街を分断せし河川を渡す役目を持ちし者。その場所は自ずと限られよう」
えーと、太い川を渡す職業の人だから、水路の幅が大きい場所を探せばいいと。
「一番大きな水路は……。それはそれで結構遠いね。いっその事、飛び越えられないかな?」
「リーゼロッテは行けると思うよ。グリモアはもう少しかな」
「何で?」
私には跳躍スキルがあっても無理ですし、出来ると言われても……、納得できませんし、やっぱり無理ですね。
「ショートジャンプで飛べると思うよ」
「あー、なるほど。じゃあ、狭い水路探して、スクロールで全員飛ぼっか」
「……ハヅチが大体10メートルだって言ってたね。ただ、限界まで飛ぼうとするほどずれるらしいよ」
そういえば遥か前にある程度の確認をしたっきりで詳しい仕様は全く知りませんでした。ズレに気付くほど精密に飛ぼうとしていませんでしたし。
「転移の技法は、技能の練度によって安定させることが出来る」
あー、スキルレベルでズレが減っていくわけですか。そもそも覚えるのがLV30なので、その時点で気付くほどのズレはなさそうですけど。
「ま、そのへんはやり方しだいだな。一度試してみるか? あの橋の辺りは水路が狭かったはずだが」
アイリスの提案により、一度試すことになりました。ショートジャンプのスクロール自体は備蓄が少しあるのでそれを渡せばすみます。
「それじゃ、私から行こっか。スキルで飛べなくされてたら、スクロールの無駄になるし。【ショートジャンプ】」
画面が一瞬で切り替わり、狙い通り水路の向こう側へと飛ぶことが出来ました。今思えば、泳げば誰でも渡れそうですね。
「行けたよー」
「わかったー。少し下がっててー」
こういうのは距離がほんの少し足らず、爪先だけ辿り着いて結局落ちるというのが定番です。そこで下がらずに横にずれていつでも手助け出来るようにしましょう。
「まずは我が。【ショートジャンプ】」
最初の挑戦者はグリモアでしたが、ショートジャンプは使えないにしろ、空間魔法は持っているため、何の問題もなく辿り着きました。そのため、手招きして私の横についてもらっています。理由も話したので、私まで落ちそうになった時の保険ですよ。
まぁ、結局は取り越し苦労で全員無事に渡れたのですが。
せっかく理由を考えたのに残念です。
「さて、それでは行くか」
場所はミニマップに表示されているので、迷うことはありません。道が入り組んでいない限りは。しかし、橋が壊れていたので、この辺りはまだ足を踏み入れていない場所であり、クエスト探しもしていません。そのため、クエストの目的地へまっすぐに向かうことはせず、なるべく回り道しながら進みました。
結果的にこの辺りにも受けられるクエストはあるのですが、他の場所と同じように前提条件を満たしていない感じがします。そして、とうとう修理素材を受け取る場所へと着いてしまいました。
「おっちゃーん、橋の修理の材料、受け取りに来たよー」
モニカは元気がいいですねぇ。私は歩きづめで精神的に疲れましたよ。クエストの受注が上手く行っていれば疲れることもなかったかもしれませんが、この妙な感じはダメですね。
「おう、話は聞いてるぜ。けど、そんな細腕で持てるか?」
「ふっふっふ、あたしは見かけによらないよ」
「そうかい。それなら頼むぜ」
そう言ってNPCが示したのは大きめの木箱ですね。それが6個、インベントリに入ればいいのですが……。
「……あー、この手のは入らないんだよね」
時雨、死刑宣告はしないでください。STRの上がるスキルがない私に持てるのでしょうか。まぁ、付与で一時的な強化は出来るので、無理なら無理で方法はありますし、最後の手段もあるのでやる方次第ですね。
ただ、どうしても確認しなければいけないことがあります。
「これってさ、ショートジャンプで運べる?」
「……」
ここでの無言はやめて欲しいです。何も言っていないのに、如実に語っているじゃないですか。
「さて、運ぼうか」
アイリスも、視線をそらさないでください。
時雨とモニカとアイリスは難なく持ち上げ、リッカも視界を塞ぎながらも持ち上げました。スキル構成的にAGI型だと思っていたのですが、結構STRもあるようです。いやまぁ、純粋な後衛と比べちゃだめですよね。
ちなみに、私とグリモアは持ち上がりませんでした。そこそこの大きさがあるので二つは持てないようなので、自分でなんとかしなければいけません。
「【アタックアップ】【ファイアエンチャント】」
ええ、STRの上がる付与を複魔陣で同時発動ですよ。かなり無駄な魔法陣の使い方ですが、付与出来れば何でもいいんですから。
ちなみにグリモアは一個ずつ発動していました。
「お、重い」
けれど何とか持ち上がりました。足が震えそうですが、何とかなりますね。
「な、汝、何故……」
おや、グリモアは持ち上げられていませんね。お互いに純粋な魔法職なのでSTRに差はないと思うのですが。
「グリモアはリーゼロッテと違って体術とか剣とか持ってないからね」
おう……。時雨以外から謎の視線を向けられています。それぞれがどんな考えを持ってその視線を向けているのかは知りませんが、私は純粋な魔法職です。
「【召喚・信楽】」
6人PTでも一体までは召喚出来ます。そこで、最後の手段です。
「ふっふっふ、信楽の種族を教えていなかったね。信楽はラクーンファイターという体術スキルを持った従魔だ。つまり、STRが、どぅわ……」
急に力が抜けていく感覚に襲われ、木箱をその場に落としてしまいました。な、何故です。私のSTRは……、ん、STR?
「信楽の召喚コスト、MPとSTRだった……」
ぬかりました。信楽にグリモアの補助をしてもらおうと思ったのですが、これでは私が運べません。
「ごめん信楽。【送還・信楽】グリモアも期待させてごめん」
「い、いや、汝に非はない。我が一人で運ぶことが出来ない故」
「リーゼロッテの体術と剣ってそこまでスキルレベル高くないよね」
「格闘が14で剣が15だよ」
「んー、ま、試してみよっか。【召喚・クロスケ】」
時雨が召喚したのは尻尾を二本持った狐のクロスケです。種族は知りませんが、妖狐とか、そっち系統だと思っています。
「尻尾で手伝ってあげて」
時雨のお願いに頷くクロスケは可愛いですね。やはり、小動物は正義です。
クロスケはグリモアにお尻を向ける位置で二本の尻尾を器用に使い、木箱を持ち上げようとしています。すると、二人で協力してになりますが、ゆっくりとですが持ち上がりました。どうやら成功のようです。あのふわふわの尻尾は力が強いようですが、気持ちよさそうな尻尾です。
「それじゃあ運ぶか」
「【ショートジャンプ】」
まだ確認していなかったので、試しに飛んでみると、両手が重さから解放され、ガタっと大きな音がしました。
ふっ、ふふふ、現実というのは厳しいものですね。これで、行きに使った方法が使えないことが確定しました。グリモアも非情な現実を突き付けられていますが、ここは諦めるしかなさそうですね。
「それじゃ、行こっか」
帰り道は行きにクエストを探したということもあり、寄り道せずに向かうことにしました。そもそも、使える橋がある辺りはハヅチ達が歩き回っているので、私達の担当ではありませんし。
付与の持続時間に注意し、時折掛け直しながらえっちらおっちら運んでいると、グリモアが何かに気付いたようです。
「トラゲットへの道標!」
グリモアの両手は塞がっているため、視線を何となくで辿ってみると、何かの案内板がありました。えーと、渡し船乗り場……、渡し船!
「あー、行きに言ってたやつだ」
「お、見つけたのか」
「行ってみる?」
時雨達は重く感じないようで寄り道に抵抗がないようです。私としても、移動距離が短くて済むのなら、それに越したことはありません。
案内板に書かれた通りに進んでいくと、街を横切る大きな川へと辿り着きました。別の場所には橋が掛かっていたので普通に渡りましたが、クエストを受けた場所の橋が使えないだけでこの大きな川を行ったり来たりしなければいけないのは、とても面倒くさいです。
「さー、もうすぐ出発だよ」
船……、いえ、ゴンドラですね。両端にそれぞれ一人ずつの船頭さんがいますが、二人共筋骨隆々で同じオーバーオールを身に着けています。これは制服なのでしょうか。
近付くと、渡し賃として1,000G取られることがわかりましたが、遠回りするのが面倒だと皆の意見が一致したため、このまま乗り込むことにしました。
「おや、嬢ちゃん達、橋の修理を手伝ってくれてるのか。なら、今回は、タダでいいぜ」
「おっちゃん、ありがと」
元気あふれるモニカが代表してお礼を言っています。私達もお礼は言っていますが、あそこまでの元気は出せそうにありません。特に、グリモアにはまったく余裕がありませんね。
「おーし、出発だー」
今は荷物を下ろすことが出来るので、痛んでいない肩を揉んでいますが、これは気分的なものです。ええ、私は肩こりとは縁遠いですから。
「時雨、重そうだから、肩でも揉もおか?」
「リーゼロッテの方こそ、滅多にない経験でしょ。揉んであげるよ」
……ぐふ、予想以上の反撃を受けてしまいました。気にしているつもりはありませんが、やはり来るものがあります。おのれー。
「な、汝ら、ここで暴れると、転覆の危険が……」
おや、グリモアが慌てていますね。船が苦手なのでしょうか。
「あー、大丈夫大丈夫。そんな危ないことしないから」
「そうだよ。ちょっとじゃれてるだけだから」
渡し船がゆっくり進んでいるので暇つぶしも兼ねていましたから。
しばらくして、ゴンドラが目的地へと到着しました。
「とーちゃーく」
「おっちゃん、ありがとね」
モニカが元気よくゴンドラから降りていきました。私達もそれに続きますが、グリモアは慎重に進んでいます。今更ですが、ハヅチPTの花火とヒツジはこれを持てるのでしょうか。まぁ、私達は一人一つ持っていますが、全部で12個運べばいいので、運べる人に運んでもらうという最後の手段もありますよね。その際にはショートジャンプのスクロールを提供しましょう。
しばらく進み、ようやく目的の場所が見えてきました。
「おー、ご苦労さん。後は俺達がやっとくぜ」
そう言って私達の前に現れたのはNPCではなくプレイヤー達です。しかも、持ったままでは通り抜けられそうにないぐらいの間隔で立ち塞がっています。やるのなら、せめてそのニヤついた顔を隠して、NPCを示すアイコンの代わりを着ければせばまだ騙される人もいたかもしれないのに、随分と雑ですねぇ。
「そこ道空けてね」
モニカが木箱を頭の上に持ち上げて器用に通り抜けていきました。木箱は無理でも体を横にすれば通り抜けられるのですが、立ち塞がっているプレイヤーに対して目もくれない素早い行動で反応される前に通り過ぎたため、唖然としてるプレイヤー達が可哀想になってしまいました。
ただ、私とグリモアには不可能なので、こまりましたね。
いっそGMコールを。
「おっちゃん、こっちだよ」
「おう。嬢ちゃん達、すまねえな」
クエストのカウンターは1/12になっているのでモニカは既に運んだ扱いになっており、そのまま目的地にいたNPCを連れて戻ってきました。背後からNPC達に押し退けられ、プレイヤー達が端に寄せられてしまいました。思わぬ光景に驚きましたが、そのまま私達の持っていた木箱を受け取って来れたので、カウンターが6/12になりました。ゴールが遠いなら、ゴールを持ってくればいいと考えるとは、柔軟な思考をしているんですね。私には真似出来ませんよ。
最後に時雨が邪魔をしたプレイヤー達に向かって何らかの操作をした後、いい時間なのでログアウトすることにしました。
ただ、その前にクランハウスへと戻り、ショートジャンプのスクロールの補充し、ついでに倉庫に6枚入れておくことにしました。用意しておくと言っておいたので、必要となれば使うでしょう。
サウフィフでクエスト探しをした日の夜、いつもの様にログインの時間ですが、今日は宿題をやっていなかったので、日課の作業をしてから宿題を進めましょう。
ちなみに、クランクエストの残りは後でハヅチ達がやりに行くそうです。ただ、純粋な魔法職である火花とヒツジでは持てそうにないため、時雨が着いて行くそうです。私達が納品するときにいたプレイヤー達は時雨がブラックリストに入れているため、何かあっても行動しやすいとか言っていましたね。
「……リーゼロッテ、ここ、教えて」
「あー、ここは……」
リッカもいつの間にか隣で宿題を始めていましたし、何だかんだでクランクエストに出ているメンバー以外は全員クランハウスにいました。黙々と宿題をしているので、静かですが、召喚している従魔同士は楽しそうに戯れています。
「リーゼロッテ、ここ、教えてくれ」
「アイリスが聞いてくるって、珍し…………、いや、流石に習ってない範囲なんで」
「そうか。すまない」
宿題を見せあっていると思わぬところで学年がばれますね。まぁ、そのリスク込みで見せあっている面もありますが、知ったところで何かする気もありませんし、何かする方が面倒ですから。
ピコン!
――――クランクエスト【橋の修理を手伝おう】が達成されました――――
修復素材を届ける 【クリア】
これにより、サウフィフの住人の態度に変化が生じます
――――――――――――――――――――――――――――――
おや、例のクエストが終わったようです。それにしても、サウフィフで感じていたものの正体はこれですか。まさしく、前提条件を満たしていなかったようですね。
ハヅチ:クランクエスト終わったぞ
ハヅチからのクランチャットです。クエスト完了のメッセージは出ていますが、念のためですかね。さて、返事をしておきましょう。
リーゼロッテ:こっちにも表示出てたよ
ハヅチ:そうか。このままクエスト巡りする予定だけど、皆はどうするんだ?
リーゼロッテ:~全員宿題中~
さて、どんな反応をするのでしょうか。
時雨:ハヅチ達が現実逃避しちゃった。とりあえず私は戻るね
ハヅチではなく、ハヅチ達ですか。まぁ、時雨は戻ってくるようですし、今日はこのまま勉強会ですかね。
その後、戻ってきた時雨も静かに宿題をし始めたので、黙々と続きをやることになりました。ですが、ずっと宿題をしていると途中で集中力がなくなります。そこで。
「お茶飲む人ー」
試しに聞いてみると全員が手を上げました。更に、前もって湯呑みを用意するよう言っておいたので、ちゃんと用意しています。ただ、湯呑みを出してきたのは時雨だけで、他の皆はマグカップでした。
それでは全員の湯呑みを預かり台所へと向かいます。えーと、まずはお湯を沸かして……、あ、量はどのくらいでしょうかね。まぁ、余ってもいいのでおおめにしましょう。
次に急須に茶葉を1個入れてと。あ、これお湯の量に関わらず茶葉を入れた時に指定した量になるんですね。かといって、茶葉の節約におおめに設定しても一定時間経つと消えてしまうそうなので、よく考えていますね。
えーと、6人分っと。
おや、お湯ももう沸きましたね。ここでフルダイブなのだから一瞬でお湯になればいいのにと言ってしまっては、風情がありませんから、言わないでおきましょう。随分早いですし、心の中で思っても、口に出さなければ問題ありません。
あ、お盆がありません。困りました。
「手伝いに来たよ」
「流石時雨。でも、向こうで注げば問題ないから湯呑み持ってって」
わざわざ持ってきてなんですが、お盆もポットも要りませんね。まぁ、準備不足でしたが、必要なものって案外その時にならないと思い浮かびませんよね。
そして、全員分のお茶を注ぎました。
「ありがとー、あちち」
「普通に熱湯だから冷ましてね」
普通は沸かしたばかりの熱湯で入れるものじゃありませんが、私はその辺り気にしないので、いつも飲むまでに時間がかかります。まぁ、湯呑みだと熱くて持てないので、熱すぎるのを飲むということが出来ませんけど。
ずずず。
「ふう」
そういえば和菓子ではありませんが、お茶請け代わりに甘いものでも……、おっと、これはダメですね。ええ、これは出せません。何せ、手に入れる方法がもうありませんから。なので、飴を出しましょう。
「飴ならあるよ」
「ありがとー」
和菓子を作れる人を探さなければいけませんね。これは最優先事項です。まぁ、シェリスさんに聞けば教えてくれそうなので、今度会ったら聞きましょう。
この後、街の変化を確認してきたハヅチ達が戻ってきて宿題をやり始めたので、宿題のデータをコピーしてハヅチに渡しておきました。どうせ後で見せろと言ってくるので、出来ている分は渡してしまいましょう。
クエストがありそうな場所は、やはりクランクエストを完了した後でクエストが発生したらしいので、後はその内容をまとめるだけです。まぁ、他から情報をもらったりしてもいいですし、急ぐ必要もありませんね。
7月最後の日、この日は月曜日なので前に決めた通り、軽く散歩することにしました。ずっと寝ていては体に悪いですから。
ちなみに、今回は伊織も一緒です。
「暑い……」
「無理に着いてこなくてよかったのに」
「いや、流石に運動不足はね……。それに、欲しい物もあったし」
大人しく伊織の買い物に付き合います。伊織が使う日用品なのに、何故か私も買うことになりました。確かにそろそろなくなる頃ですが、何故に残量を把握されているのでしょうか。
その日の夜、ログインしてから日課をこなす最中に公式HPを確認すると、メンテナンスの告知が来ていました。今日の深夜、明日になった瞬間から、お昼過ぎまでの予定のようです。
今わかる内容としては、イベントが始まるということと、よくある修正くらいですね。
イベントに関しても夏祭りイベントとしか発表されていないので、具体的に何をするのかは不明です。ま、明日になればわかるので、気にしても仕方ないですね。
ただ、昨日今日と急ピッチで宿題を進めたので、何とか7月中に終わりました。これで、宿題に追われずに夏休みを過ごせます。
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