繋がりのない掌編集。全体的にどんよりと灰色、後ろ向きだけれどどこか前向き(「名刺」なんかは特にそんな感じ)という趣の作品。温かいような冷たいような、あいまいなようでテーマはハッキリ感じ取れるような。サラリと読めますが浮かぶ情景は不思議で、安直な暗さも明るさもなく、それが逆に疲れた体にちょっぴり元気をわけてもらえるような、不思議な作品集でした。個人的なお気に入りは「花瓶」ですね。切なくて切実で鬼の存在が温かい。