第34話 その後
「父さん、この大きな魔石は使い道があるの?
大きすぎて、武具にはめ込めないし」
父ちゃんがその巨大な魔石を見て、思い出しながら言う。
「
それは、広域防御に適した魔石であり、城を含めた町全体の防御ができると言われている。
しかし、まさか現物が目の前にあるとは……。
いずれ、トルムルがこの魔石に防御魔法のスキルを付与するようになると思う。
これは、城に持ち帰って保管した方がいい」
ま、町全体の防御魔法……。
父ちゃん、いくらなんでも……む、無理な気がする。
4人に防御魔法を掛けるのが精一杯だったのに。
それを、城と町?
そんなの、大賢者でないと無理だよ。
……?
そうか。大賢者になればできるってことか。
でも、それがいつできるやら……。
あ、そうだ。
防御魔法のオッパイと一緒地面に押しつぶされ、穴に埋まっているラーズスヴィーズル達は?
「トート、ラー、ズー!」
そう言って俺は、ラーズスヴィーズルがいる方向を指差した。
ヒミン王女が俺の言っている意味が分かってくれた。
「トルムル様は警護のラーズスヴィーズル達を心配しているのですね。
彼らは大丈夫なのですか?」
生きているのは間違いないけれど……。
両手で、手のひらを上に向ける。
エイル姉ちゃんがすぐに反応した。
「トルムルも分からないと言っているわ。
向こうに居るみたいだから急がなきゃ」
みんなはラーズスヴィーズル達のいる場所に着いた。
大きなオッパイ型の穴が開いていて、そこから出られないで四苦八苦していた。
重力魔法を使えばいいと思うんだけれど……?
どうやら、自分自身を飛ばせないみたいだ。
俺とウール王女が特殊なのか?
みんなで協力をしてラーズスヴィーズルを穴から出してあげた。
「み、皆さん。こ、こんにちは。
えーと、助けて頂いてありがとうございます。
散歩していたら、
そのー、どなたかが……。
わ、私達を包む防御魔法を発動してくださり、ありがとうございました」
「ラーズスヴィーズル、怪我はないのですか?」
ヒミン王女が心配になって言う。
「かすり傷だけで済みました」
エイル姉ちゃんが持っている
「も、もしかして、その魔石は
す、凄いです!!
誰がたおしたのでしょうか?」
父ちゃんが当然のように言う。
「みんなで協力をして倒しました。
この魔石を城に持って帰ってはくれませんか?
ヒミン王女は、ウール王女を抱いているので持ち帰れないのです」
ラーズスヴィーズルは、いまだに
しかし、エイルちゃんが魔石を渡すと、腰を抜かすほど驚いていた。
「そ、それでは皆さん。
わ、私は、こ、これで失礼をいたします」
そう言うとラーズスヴィーズルは仕事に戻っていった。
彼も一緒にいればいいと思うんだけれど……?
大人の仕事って分からない。
「そうだわ父さん。
「エイル、心配しなくても沢山落ちている。
俺も気になっていたので地面を見ると、小さな魔石が沢山落ちていた。
えーと、これ全部拾うんだよね。
俺も、よ、四つん這いになって、手伝わなければいけないよな……。
それから俺たちは、魔石拾いに苦労した。
あまりにも広範囲にあったので、全部集めるのに夕方までかかってしまった。
予想をはるかに上回る成果。
ちょっと、多すぎるけれど……。
数年は大丈夫だよと、父ちゃんは言ってくれた。
俺は手と足に、すり傷を作ってしまう。
ウール王女は楽しそうに、そこら中歩いて探し出していた。
はるかに俺より見つける数が多いい。
四つん這いと、歩くのとでは行動範囲がこんなにも違うのかと実感した。
父ちゃんが一番多く見つけていた。
四つん這いの俺が……、一番少なかった。
歩けるようになりたいと、これほど強く思った日は今までなかった。
筋トレの時間をもっと増やそうと、心に誓っていた俺がそこにいた。
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