12.学園のシステムが特殊過ぎる件
さて、今日から仕事が始まる。学園の臨時講師として働きながら、悪役令嬢になりたいお嬢様のサポートをするという簡単なお仕事。
いや、別に簡単というわけではないのだが、まあ、なんというか。
でも学園の臨時講師って何をすればいいんだろうか。お嬢様をどうにかしろという話は聞いたが、肝心の臨時講師について話を聞いていない。俺は元の世界でもまだ高校生だったんだ。そんな俺が臨時にせよ講師なんてできるのだろうか。ちょっと難しいのではと思ってしまう。
そんなことを考えながら俺は自分の身支度をし、のじゃロリに手をかけた。
『はうぅん』
「変な声出すなよ。気持ち悪い」
『その反応はひどいと思うのじゃっ!』
「お前のその声は俺を犯罪者にさせる要素があるんだよ」
『まあそれほどでもあるのじゃっ』
「ほめてないからな。ぜったにに褒めてないからな」
まあいつものようなやり取りをして俺は部屋を出てリセとイリーナと合流する。
「おはよう諸刃。今日はどこのラーメン屋さんに行く?」
「私はここに行きたいです、主殿っ!」
二人して朝からいきなりこてっこてのラーメン屋さんのパンフレットを見せてきた。けど今日から仕事だ。仕事だからな? だから絶対に行くつもりはない。だって匂いがひどいことになりそうだしな。それに、今日から俺たちの仕事が始まる。今からラーメンを食べに行く時間なんてない。
「いや、今日から仕事なんだ。ラーメンを食べている暇なんてないぞ。食べたいなら休日に行け」
「「え~」」
そこで文句を言うなよ。
そんなにラーメン食べたいなら俺が後で作ってやるからな。
口に出すとまたややこしいことになりそうなので絶対に言わないけど。
とりあえず、どこに向かえばいいのかわからなかったので、職員室的な場所に向かおうとした。その途中でゼイゴと出会う。
「おはようございます、くそ野郎」
「なんかずいぶんな言われようだなおい」
昨日はそんなでもなかった気がするのに、彼女にいったい何があったんだろうか。まあ、ぶっちゃけどうでもいいことなんだけど、理由もなく嫌われるとちょっと辛いというのが男心ってやつだ。
「なんか幼女と美人を侍らせたくそ野郎を発見しましたのでつい」
「ついじゃないよ。俺の仲間には昨日会っているだろう。それなのにそのいわれ用は何?」
「っち」
「舌打ちされたっ」
こいつ、なんか目もきつく吊り上がってるし、もしかしたら朝が弱いだけなんじゃないだろうか。なんかそんな気がする。
「リア充、爆発しろ……」
そっちか……。確かにゼイゴに春はこなそうな気がする。こいつはお嬢様かわいいといって鼻血を出す変態だからな。
ところでこいつは何をしに来たのだろうか。
仕事の話は昨日聞いた。特に気になる点はないし、こいつが来る理由は……臨時講師の件か。
臨時講師になってシンシアお嬢様をサポートしてほしいという話は聞いたが、その臨時講師の仕事がどういうものなのかは聞いていない。その辺を教え忘れたことを思い出してこちらに来てくれた……的なことだろうか。
「昨日、この学園の臨時講師の件についてお話するのを忘れてしまったので説明しに来たんですよこの野郎、バカ野郎」
キャラがおかしい方向に進んでいる気がするが、放っておこう。
「わかった、とりあえず話しながら向かおうか」
「わ、私の隣を一緒に歩いてくれるんですかっ! 私に、春が来るかもっ」
「「ダメっ」」
ゼイゴが妙な勘違いをし、俺がとられるとでも思ったのかリセとイリーナが抵抗する。にらみ合うゼイゴとイリーナたち。俺がこいつにとられるとか……ないな。というか仕事のためにとなりを歩くだけなのにどうして春が来るにつながるんだよ。こいつの思考はよくわからん。
「落ち着けよ。こいつに春が来るわけないだろう。仕事の話をするんだぞ」
「「「そうだったっ」」」
リセとイリーナに混じってゼイゴが驚いている。お前は驚くなよ。春が来るわけないだろうってところに驚くゼイゴもどうかと思うけどな。
「とりあえず臨時講師って何をすればいいのか教えてくれ」
「しょうがないですね。仕方ないから教えてあげます。べ、別にあなたのためにやってるとか、そんなんじゃないんだからねっ
「いやそれがお前の仕事だろう。別に俺のためでも何でもないだろう」
「ノリが悪い。マイナス10点」
なんの採点をされているのだろうか。ネタ的なことだったらぶっ飛ばしてやりたい。
「簡単に説明すると、われらがお嬢様にいろいろと教えるだけでいいですよ。ぶっちゃけ、ここの学園に正式な教員はいません。基本的に事務職員のみです」
それは学校としてどうなのだろうか。
「学園のシステム上、生徒たちの個々の力に合わせた教師が生徒に割り当てられます。この学園の臨時講師、結構割のいい給料が出るので倍率高いんですよ。教員は学校に入学してから1か月以内に決められます。また納得のいかない教員だったときは生徒がクビにできます。ちなみに現在入学式が行われてから3か月たちましたがお嬢様の教員はまだ決まっていません……」
「なんか生徒一人ひとりに家庭教師が付くみたいな感じか……。見た目学校なのに、って、3か月も決まってなかったのっ!」
ある意味で驚きだよ。お嬢様なのに教師が決まらないなんて。これってある意味でたたかれる対象になりそうなんだけど。
「まだ決まっていないのはお嬢様とミーという平民出身の女子生徒だけです」
「……ん? 平民の生徒がいるのか? お貴族様の学園なのに?」
まあでも、悪役令嬢になれなんて言われてるんだから、それっぽい感じの状況になっても不思議じゃないよな。
一人疑問に思って一人で納得したが、リセとイリーナはなんの話をしているのかわかっていない様子だった。
まあ二人だから仕方がないか。
「そのおかげで、高貴なハズなのにいろんな方々に馬鹿にされて……。でも、教師がいないにも関わらず優秀なのでいろんな方に妬まれて、そんな中でもめげずに頑張るお嬢様は可愛くて正義なんです」
「なんか大変ですね」
とりあえず適当に返事しといた。でも心の中ではプレッシャーに押しつぶされそうな気分だった。
学園には生徒一人ひとりに教師が付く? そんな常用で常にトップって、めちゃくちゃ優秀じゃん。俺の存在いらなくね?
…………あー、だからか。
「俺はとりあえず、優秀なお嬢様の近くにいて教師のふりをして、おかしな行動をとった時にサポートすればいいんですね」
「まあそう言うことです。今は一応座学をやっています。座学は各生徒に割り振られた個別の部屋で行なっておりますのでまずはそこに行きましょう」
ゼイゴの案内で俺はシンシアが勉強している部屋に向かった。部屋の中に入ると、集中して勉強しているシンシアの姿が。俺のイメージする悪役令嬢と何か違う。
俺のイメージする悪役令嬢とは、馬鹿で勉強もせず、他人を蹴落とすことだけを考えているような存在だ。
こんな、こんなシンシアお嬢様のような真面目な子が、悪役令嬢でいいのだろうか。
まあぶっちゃけ、悪役令嬢っていうのは神様のお告げ的な何かっぽいし……どうでもいいだろう。
俺はちらりとシンシアが勉強している内容を除く。さっぱり分からなかった。俺に一体何ができるのだろうか。この仕事、なんか不安なことばかりな気がする……。
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