哀れな怪物と魔導帝国

第101話 再開と旅立ち

 ユウヤ達は他の客の邪魔にならないように荷物を持って宿を出た。

 宿を出た後は町の港に向かい海の向こうのユウヤ達が育った大陸に戻るための船を待っていた。

 船を待っている間にユウヤ達は二年の間に何をしていたことを話し合った。


「まず、俺から話した方がいいよな」

「そうだな。把握できてないのはユウヤのことだけだからな」

「ユウヤは二年間ずっと修行してたの?」


 確認するように問いかけたユウヤにルクスは頷きながら返し、マユリが気になっていたことを問いかけた。


「ああ、この二年はずっと修行してたな。おかげで格段に強くなれたよ」

「格段に……ね」

『それは君の魔力量を見ればよく分かるよ』


 ユウヤの言葉にレティシアは少し暗い顔で小さく呟き、ルイスは呆れたような声で返した。


「魔力量が増えただけじゃないさ。剣の腕も格段に上がった」

「魔力増やした上に剣の腕も磨いて来たのか。俺ももっと強くならないと足引っ張りそうだ」

「レティシアとマユリの成長の早さに焦ってたものね」

「余計なことは言わなくていいんだよ」


 ユウヤの言葉にルクスは苦笑して頭をかきながら呟くが、レイラはからかうように微笑みながら呟いた。

 レイラの言葉にルクスは何も言えずにため息をついて落ち込んだ。

 二人のやり取りにユウヤ達三人が苦笑して見ていると、ルイスがユウヤに問いかけた。


『私が一番気になっているのは、君に掛けられていた呪いのことだよ』

「「「「「!?」」」」」


 ルイスの突然の問いにその場にいた全員が驚いた。

 ユウヤはイザナミ言われて初めて知った呪いのことをルイスが知っていることに、レティシア達はルイスがユウヤに呪いのことを問いかけたことに驚いてルイスの次の言葉を待った。


『どうして君に掛けられていた呪いが消えているの?』

「どうして呪いのことを知ってるんだ?」


 ユウヤの呪いが消えているということにレティシア達は驚いてユウヤを見るが、ユウヤは呪いが消えた理由については知っているので驚かずにルイスに問い返した。


『私は精霊王だからね。呪いや魔法に関しては人間とは感覚が違うんだよ』

「つまり、最初から知ってたのか?」

『もちろん』

「そうか」


 ルイスの答えにユウヤは特に気にした様子もなく頷いて返した。

 その態度が気になったマユリはユウヤに問いかけた。


「気にしてないの?」

「教えなかった理由が何かあるんだろ。それに教えてもらってもどうにも出来なかっただろうしな」

『そうだね。あの呪いは私にも解くことが出来ないものだから、君が知っていても何も出来なかったよ』


 ルイスはユウヤの言葉を肯定して少し間を開けて問い直した。


『だからこそ、どうして呪いが消えたのか教えてくれないかな』


 ルイスの問いにユウヤは悲しそうな顔を浮かべて俯き、マユリ達はルイスと同じように呪いが消えた理由が気になりユウヤに視線を向けた。

 しばらく俯いていたユウヤは顔を上げてこの二年間とイザナミのことについて簡潔に話した。

 ユウヤの話を聞いていたレティシア達は何と言っていいか分からずに俯いて黙り込みかける言葉を必死に考えていた。


「そんなに気にしなくていい。会えなくなっただけで死んだわけじゃないんだ」

「けど……」

『確かに、神である以上依り代を壊しても死なない』

「依り代になる人がいればまた会えるってこと?」

『依り代になってくれる人がいればね』

「好き好んで依り代になりたがる人はいないでしょうね」

「だな」


 レイラとルクスの言葉にマユリは暗い顔をして俯き、ユウヤは気づいていたのだろう落ち込むことはなく悲しそうな顔をするだけだった。


「けど、旅の目的であった秘薬は二つ手に入った」

「それなら俺達も霊峰の地下から取って来たぞ」

「何かあってもいいように予備も含めて三つ分手に入れたわ」


 ユウヤが秘薬の瓶を二つ出すと、レティシアも異空間収納から瓶を三つ取り出した。


「合わせて五つか」

「結構たくさん手に入ったわね」

「まあ、多いに越したことはないだろ」

「そうだな」


 レティシアがユウヤの分の秘薬も異空間収納にしまっていると、来る時に乗せてもらった船の船長がユウヤ達を呼びに来た。

 船長の案内で船に乗りこみ客室で休みながらレティシア達が秘薬を手に入れるまでの過程の話を聞きながら過ごした。

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