第38話 デートですか?
ユウヤ達は横並びのまま、マユリの案内で出店が並んでいる大通りまで来ていた。
大通りでは、何かの肉か分からない串焼きや雲のような棒に巻き付けられたお菓子、果物など、様々なものが売られている出店が並んでいた。
「すごいな」
「あんまりこういうところ来たこと無かったしね」
「そうだな」
「二人ともこんな場所は始めて?」
「ああ、なにがいいか分からないから任せるぞ」
「任されました」
マユリはとても楽しそうな顔でユウヤの手を引いて連れて出店を巡り始めた。
「何か食べたいものある?」
「そうだな」
マユリに問いかけられてユウヤとレティシアは辺りの出店を見渡しながら考えて、少してユウヤが串焼きの店を指さした。
「あの串焼き食べてみたいかな」
「いいわよ」
ユウヤの言葉を聞くとマユリは手を引いて出店に近づいて行った。
「おじさん、串三つ」
「はいよ。お兄ちゃん、綺麗なお嬢さん二人に挟まれて羨ましいね~」
「お世辞がうまいね、おじさん」
「綺麗だなんて……」
「あははは。もしかして、三人でデートかい?」
マユリが串を買うと、おじさんは串を用意しながら三人を見て笑いながら話しかけてきた。
レティシアは恥ずかしそうに少し俯き、マユリは笑いながらおじさんと話している。
ユウヤは呆れた顔でおじさんの質問に返した。
「違う。仲間と友達だ」
「ええ~、つれないな~」
「もったいないぞ、お兄ちゃん」
「はあ、まだそういうことに興味が無いんだよ」
「おいおい、いい年してそれは無いだろ」
「今は他に目的があるんだよ」
「目的が終われば色恋に興味を持つのかい?」
「知らん、興味があっても俺に好意を抱く相手がいるとは限らないだろ」
「おいおい。まあ、今回はサービスしておくぞ」
おじさんは呆れたような顔で呟くと、串を三本多く渡してくれた。
マユリが串の入った袋を受け取り、ユウヤがお金を払った。
マユリが御礼を言いながら、出店から少し離れてユウヤとレティシアに串の入った袋を差し出してきた。
「ありがとう。それと手を放してくれないか二人とも、これじゃあ、食べにくいんだが」
「ええ~、いいじゃない」
「食べた後でつなげばいいだろ、てかなんで手をつないでるんだ?」
「細かいことは気にしない」
「マユリの言う通りよ、けど確かに食べにくいわね」
「食べてる間だけだよ」
「はいはい」
マユリとレティシアは串を食べるためにユウヤとつないでいた手を放して、串を袋から取り出して食べ始めた。
「うまいな。これは牛の肉か」
「そうみたいね」
「この肉、今まで食べた牛より美味しいわね」
「そういえば肉も柔らかくて食べやすいな」
「それはね、この町の周りは水が綺麗で食べるものの栄養も豊富、家畜もほとんどストレスを感じないから美味しいらしいわ」
「人から聞いた話かよ」
ユウヤとレティシアの疑問にマユリは嬉しそうで少し誇らしげに説明した。
「私は専門家じゃないもの、そんなに詳しくないわ」
「……なるほどな」
「どうかしたの?」
「いや、なんでもない」
ユウヤはマユリが誇らしげなことから、マユリの歌で活発になった精霊が影響していると察して小さな声で呟いた。
「それで次は何を食べる?レティシア」
「そうね……」
レティシアは周りの出店を見ながら食べたいものを探し始めた。
しばらく、周りを見ているとレティシア達と同じくらいの歳の女の子や子供を連れた女の人が多く出入りしている出店を見つけた。
「あれは何?」
「ああ、クレープって言うデザートよ」
「美味しいの?」
「ええ、食べてみる」
「うん」
マユリとレティシアはそれだけ話すと串を食べ終わり、買った時に入れた袋に串を入れて近くに設置されていたゴミ箱に入れた。
ごみを捨てると、レティシアとマユリはユウヤの手と袖を掴んでクレープの出店まで引っ張っていった。
クレープの店は少し並んでいて注文するのに少し時間が出来た。
「それで何食べる?」
ユウヤとレティシアは出店の看板に書いてあるメニューを見ながら考え始めた。
「俺はイチゴチョコかな」
「私はバナナチョコで」
「おっけー」
マユリは二人に注文を聞くと、順番を待って店員のお姉さんに注文を始めた。
「お姉さん、イチゴチョコとバナナチョコ、フルーツカスタードを一つずつ」
「はいよ」
店員さんは慣れた手つきでクレープを一つずつ作っていった。
店員からクレープを受け取ると、ユウヤが全員分のお金を支払って列から少し離れた。
ユウヤがクレープを持って待っていると、レティシアとマユリもすぐにクレープを持って列から離れた。
「じゃあ、行こうか」
「そうだな」
マユリに話しかけられてユウヤ達は歩き出した。
レティシアはクレープを興味深そうに見ながら、一口食べて目を見開いた。
「美味しい!」
レティシアが目を輝かせながらクレープを食べ始めた。
そんなレティシアを見ながら、ユウヤも同じようにクレープを食べ始めた。
「確かに、美味しいが結構甘いな」
「そこがいいんじゃない」
「しかし、結構種類があるんだなクレープは」
ユウヤは先ほどの出店の看板に書いてあったメニューの種類を思い出しながら呟いた。
「人によっては好みが変わるからね」
「そういうものか」
「これ食べてみる?」
マユリはユウヤに食べかけのクレープをユウヤの口の前に差し出した。
「じゃあ、一口貰う」
「はい、あーん」
ユウヤはマユリの掛け声に呆れながら口を開いて、クレープを一口食べた。
「確かに、種類によって好き嫌いが分かれそうだな」
「そうでしょ。ちなみに、この味はどう?」
「美味しいが、俺はイチゴチョコがいいかな」
「じゃあ、私にも一口頂戴」
「ほら」
ユウヤもマユリがやったのと同じように口の前にクレープを差し出した。
差し出されたクレープをマユリが一口食べてよく味わった後、飲み込んだ。
「確かに、イチゴチョコもいいわね」
「だろ」
二人が話していると、ユウヤの着物の袖をレティシアが引っ張り、振り向いたユウヤにクレープを差し出してきた。
「私のも一口食べる?」
「ああ、貰うよ」
ユウヤがマユリの時と同じ様にクレープを一口食べた。
食べ終わると、レティシアにもマユリと同じようにクレープを差し出した。
「ほら、俺もの食べていいぞ」
「いただきます」
レティシアはそれだけ言うと、クレープを一口食べてゆっくりと味わっていた。
「あ、レティシアのクレープも食べてみたい」
「どうぞ」
レティシアのクレープを見てマユリは食べたいと言うと、レティシアはマユリにクレープを差し出した。
マユリがクレープを食べると、同じようにクレープを差し出した。
「私のもあげる」
「ありがとう」
レティシアもマユリと同じようにクレープを食べた。
「ん、美味しい」
「おい、レティシア、顔にクリームがついているぞ」
ユウヤはレティシアの口の周りについていた生クリームを指で取り、自分の口に運んで食べた。
それを見たレティシアは恥ずかしそうに俯いて小さな声で礼を言った。
その様子をマユリは微笑ましそうで羨ましそうな顔で見ていた。
「それじゃあ、次は何を食べる?」
その後、三人は出店を何件か回ると、それぞれの家と宿に帰った。
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