精霊王と歌姫

第31話 歌姫

 ユウヤ達が東に向かい始めて十日ほどで次の町が見えてきた。


「ようやっと町が見えて来たな」

「そうね。治安の良い町だといいんだけど……」

「どうせそんなに長いする予定はないんだ。大丈夫だろ」

「それもそうね」


 ユウヤ達は門から町に入り、宿を探して歩きまわり始めた。


「なかなか、宿が見つからないな。しかし、適当に歩いていてもらちが明かないな」

「冒険者ギルドで聞いてみる?」

「そうだな。冒険者ギルドなら目立つはずだらかすぐに見つかるだろ」

「そうね」


 二人が歩いて回っていると、一回り大きな建物が見えてきた。

 建物には冒険者ギルドと書かれた看板があり、剣や弓など武器を持った人や杖を持ちマントを付けた人達が多く出入りしていた。


「見つかったな、冒険者ギルド」

「ええ、じゃあ、聞きに行きましょうか」

「そうだな」


 二人は冒険者ギルドに入り、受付カウンターで受付をしている女性に話しかけた。


「すいません。この町で良い宿ってどこにありますか?」

「宿ですね。冒険者ギルドを出て真っ直ぐにに進むと噴水広場があって、その広場に繋がっている東側の大通りを突き辺りまで行くと宿屋通りになっております。おすすめは、大通りから見える宿屋です」

「分かりました」


 レティシアが受付嬢に話しを聞き御礼を言うと、冒険者ギルドを出ようとすると受付嬢が後ろから声をかけてきた。


「あ、今広場で歌姫のライブをやっているはずですから、良ければ寄ってみてください」

「分かりました」


 ユウヤ達は受付嬢に言われた通りに冒険者ギルドの前の通りを真っ直ぐに進んで行くと噴水広場に辿り着いた。


「すごい人の数だな」

「歌姫がライブやっているからじゃない」

「だろうな」


 二人が広場に着くと、ものすごい数の人が一か所に集まって同じ方向を見ていた。

 人の集まりに近づくと、とても綺麗な歌声が聞こえてきた。

 近づいてみると、ステージがありその上に一人の少女が立っていた。

 少女はレティシアと変わらない身長で白いドレスを纏い綺麗な金髪に宝石のような赤い瞳、彼女の歌う姿は幻想的で彼女の周りが光を反射し輝いているように見え、見るものすべてを魅了していた。


「確かに上手いな」

「ええ、本当にすごい」

「しかし、あれはなんだ?魔法か?」

「あれは精霊ね。彼女の歌声に反応しているみたい」

「へえ、あれが精霊か」

「彼女、本当に綺麗な歌声」

「そうだな。けど、あんまり聞く気にはなれないな」


 そういとユウヤは宿屋通りがある大通りに向かって歩きだした。

 レティシアは歌姫に見惚れていて、ユウヤが移動したことに少し遅れて気づき、急いで後を追った。


「どうして?綺麗な歌声だったと思うけど」

「ああ、歌声は綺麗だったな。けど、あんな悲しそうに歌われたら聞く気にはなれない」

「悲しそう?」

「気づかなかったのか?」

「ええ、全く」

「まあ、理由は知らないが、歌は楽しそうに歌ってないと聞く気になれないさ」

「そう」


 二人は話しながら歩いていると、すぐに宿屋通りに着き受付嬢が言っていたおすすめの宿に辿り着いた。


「ここだな」

「そうね」


 二人は宿に入り部屋を取って、宿の食堂で夕食を食べた後眠りに着いた。

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