魔力はあるけど魔法は使えない少年は剣を極める
水龍園白夜
怪物の誕生
第1話 はかない命
かつて大魔導師と呼ばれたアイリは、医者をやっている友人の家で昨日生まれたばかりの息子であるユウヤをベッドの上で抱いていた。
ユウヤはアイリの腕の中で安らかに眠っている。
アイリが寝ているユウヤの顔を優しい笑顔で眺めていると、ユウヤが突然苦しみながら泣き出し始めた。
アイリは突然大声で泣きながら苦しみだしたユウヤに驚いて焦っていると、友人のイリスが部屋に入って来た。
「どうした、アイリ?」
「分からないわ。突然苦しみだして」
「分かったわ。調べるからそこに寝かせて」
アイリはイリスに言われた通りにベッドの隣にある小さな赤ちゃん用のベッドにユウヤを寝かせた。
イリスはユウヤに手をかざし、ユウヤの容態を見るために魔法を使った。
イリスの手から出た白い暖かい光がユウヤの体を包んで少しすると、イリスは驚き目を見開いた。
「なに、これ……」
「どうしたの、イリヤ?」
「魔力が体の中に溜まり続けてユウヤの体を傷つけている」
「それって、どういうこと?」
「ユウヤの体に魔力を排出するための機関がほとんどないんだ。だから、魔力の生成量が排出量を上回り体に溜まっていくんだ」
イリスの説明を聞いてアイリは顔から血の気が引いた。
「じゃあ、ユウヤは……」
「ユウヤは制御出来ない強制的な身体強化のせいで体が傷つきいずれ死に至る」
イリスは悲痛な顔でユウヤの容態について説明した。
「助かる可能性はないの?」
「体が異常事態に対応して魔力の生成量を落とすまで持てば助かる。しかし、この体質の子供が助かったことはほんの一握りだ」
イリスの言葉にアイリは泣きそうな顔で俯いた。
イリスはアイリを抱きしめて背中をさすった。
「魔力の制御が出来れば助かるのよね」
「え!?」
イリスに抱きしめられているアイリが小さく呟いた。
アリスの呟きに驚いてアリスを放して顔を見ると、覚悟を決めたような目でイリスの目を見て再び聞いてきた。
「魔力の制御が出来ればユウヤは助かるの?」
「確かに、制御が出来れば助かるが、毎日増え続ける魔力を赤子が制御出来るわけが……」
「私がユウヤの代わりに魔力を制御するわ」
「な、無茶だ!?」
「ユウヤの魔力は私に似てとても多いのよ。私以外の誰に制御出来るっていうの?」
「しかし、君は……」
「ユウヤはあの人と私の子供なの。あの人に続いてユウヤも失ったら、私が生きている意味がないのよ」
「……分かった。ただし、ユウヤの容態が安定するまでここで生活しなさい。二人の身の周りの面倒は私が見るから」
「ありがとう」
イリスはアイリを止めようとしたが、アイリの覚悟の強さに諦めて受け入れた。
イリスが諦めたのを確認したアイリは、優しく温かい微笑みを浮かべてイリスに礼を言った。
アイリがイリスに微笑んだ後すぐに真剣な顔になり、ユウヤを抱きかかえてユウヤの中に溜まり続けている魔力の制御し始めた。
アイリがユウヤの魔力を制御し始めたのを確認し、部屋から出てアイリの昼食を作りに厨房に移動した。
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