2章
第18話
「レーナ。
今日はどうだったの?
危険はなかったの?」
「大丈夫でしたわ、御姉さま。
フィンが指揮を執っていますから、何の心配もありませんわ」
「そう。
そうね。
でも心配だわ。
私も一緒に行けたらいいのだけれど」
「それは流石に無理ですわ。
御姉様に何かあったら、大公国が終ってしまいます。
御姉様が宮殿で健在でいて下さるから、私達は安心して狩りに行けるのです」
「それは分かっているのだけれど、私だけ除け者のようで嫌だわ。
せめて報告は皆でして欲しいわ。
いえ、レーナだけだと嫌だと言う訳ではなのよ」
「分かっておりますわ、御姉様。
ただフィン達は私の騎士や徒士なので、大公家の公太女である御姉様の前に出るには、色々と手続きが面倒なのですもの」
婚約者だったノアが大公領から逃げ出し賞金が掛けられ、養父母であったハーン夫婦が大公領から逃げ出してから、もう三年の月日が流れました。
今私は幸せです!
ノアとハーン夫婦は、密かに帝国が匿ってると言う噂があります。
恐らく真実なのでしょう。
でも、父上様にしても、あれ以上強硬策はとれなかったと思います。
あれでも十分危険な綱渡りだったのですから。
そのような危険な綱渡りをして、私を大公家に戻してくださいました。
御父様はシューベルト侯爵家を取り潰しただけでは済まさず、帝国に尻尾を振っていた貴族家を全て取り潰されました。
その時に力となったのが、直属の騎士団と徒士団でした。
大魔境で魔獣を相手に戦ってきた、騎士団と徒士団は精鋭無比の強者達でした。
騎士家と徒士家を継げない部屋住み子弟も、大魔境で狩りをして糊口をしのいでいました。
いえ、糊口をしのぐというのは失礼な表現でした。
十分な収入を得ていたのです。
彼らが帝国派の貴族領に侵攻した時、領民が蜂起してくれたのです。
貴族領の領民とは言っても、大公国の民なのです。
大国の風習や規則を強要する貴族に、敵意を持っていたのかもしれません。
統治が酷かったのかもしれません。
領民が城門を開けてくれたので、楽々と貴族の城を落とすことが出来たそうです。
その結果、大公家は多くの直轄領を手に入れました。
それ以前も、帝国に抵抗出来るだけの経済力と戦力を有していましたが、それがさらに強化されました。
私にも、直轄領が与えられました。
私を助けてくれて、大公国の飛躍に貢献した『暁の徒士団』は、団員全てが私の家臣となりました。
全員が私に剣を捧げてくれました。
父上様は、団長を始めとする幹部に騎士の地位を御与えになりました。
私が与えられた直轄領は、貴族家から奪ったモノなので、もれなく立派な城と莫大な財産が付いてきました。
ですが私が直接統治できないので、フィン達が代官として統治してくれています。
私は、思い切って父上様に献策しました。
前世の経験は、もう何の役にも立ちません。
でも、なにも努力しなかった事。
何の行動も起こさなかった事を後悔しています。
心から愛してくださる父上様、母上様、姉上様。
想うだけで、震えるほどの愛を感じることが出来る父上様、母上様、姉上様。
御三方を護るために、勇気を振り絞って献策しました。
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