水槽の中のぼくら

水族館、暗闇の中。

クラゲの水槽だけが明るく、かがやいてみえた。


「クラゲは自分で泳がないんだって。

水に流されて生きてるらしいよ。」

そんなことどうでもいいんだけど、とりあえず相槌を打つ。


 夕方に差し掛かった大通りには、水商売のキャッチと

居酒屋の客引き。

明るすぎる茶髪につけまつげの女子高生。



 水族館で意気揚々と

「泳がないクラゲ」について語ってこの大通りに出たとき、彼は言う。


『この街も、クラゲの水槽だな』

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