なんで……

 どうも、精霊です。

 役立たずの精霊です。


 昨日の夜さ、空の上で爆発音を聞いたんだよ。龍の住み処ってかなり上の方にあるから、そこまで響いてくるって何事? って思ったんだ。

 そしたら精霊の森から、銀の柱が何本も立ってるんだよ。

 魔法が激しくぶつかる余波も感じたし。

 慌てて戻ったらさ、銀の柱は人間だけを狙ってた。

 俺、間に合わなかった……


 灰色のボサボサの長髪を振り乱した、知らない人間がいたんだ。

 灰色の瞳に、灰色のロングコート、灰色の靴、灰色水晶の首飾り。

 なにもかも灰色の、人間の男だった。


 頭に血がのぼって殺す気で水魔法を放ったんだけど、当たらないんだよ……

 あり得ない話なんだけど、そいつ俺の魔法を曲げたんだよ。

 あっちやそっちに、ぐにょっと。

 ぶちギレた俺は精霊の森を丸ごと水龍の姿の魔法で覆ったんだ。

 でもまぁ、逃げるよね。

 冷静になればそのくらい分かるんだけどさ。


 助かったのは人間以外の種族たちと、三分の二くらいの人間たち。

 助かったとは言っても、動けない人が多いけどね。でもね、生きてさえいてくれたら何とかできるから。


 さぁ、やることは多いぞ!

 人間たちの治療薬を調達してくること。

 できれば医者も。

 俺がビチャビチャのグチャグチャにしちゃった精霊の森を直すこと。

 灰色男を見つけること。

 そんで目的を聞き出す。

 次の襲撃に備えること。


 頭下げたら医者……来てくれるかな。

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