第12話 決定

 

 -最終オーディション-


 はるたちの前には、五人の少女が、それぞれ着飾って立っていた。

(あっ)

 五番の子が、どことなく、高校時代の日高に似ていた。

 はるの横に座っていた祥子は、仕事の時の顔をしていて、スタッフの一人と熱心に話しこんでいる。

 やがて、少女たちを休憩させている間に、祥子たちは会議室に集まり、議論を重ねていった。

 ふと。

「はるちゃんは、この二人のうち、どっちがイメージ出来るかな」

 祥子が、はるに話を振った。

「え、私?」

 そこには。

 日高に似ている子と、もう一人、アイドルっぽい目鼻立ちのはっきりとした子の、二枚の履歴書が置かれていた。

 スタッフの一人が、早口で、この二人の選考理由を、はるに伝えてきたけど。

(どうしよう)

 はるは、祥子を見た。

「何でもいいよ」

 と、祥子。

「あの」

「うん」

「役によると思うんですけど。妹か、姉かで少し……」

「あっそうだね!」

 大きく祥子は頷いた。

 しばらく議論は続き。

 最終オーディションに合格したのは。

 日高に似た、江島姫花えしまひめかという高校三年生の女の子だった。





 -お世話になりました-

 迎えに来た、関君と、はるは、祥子に深々と頭を下げた。

「はるちゃんはうちの役員待遇なんだから、いつでも大歓迎だからね」

 祥子の言葉に。

 もう一度、頭を下げて、はるは車に乗り込んだ。

 車は、ゆっくり動いて。

「はるさん、今日、社長の代理で日高さんの舞台を観に行ってもらえますか」

「え、社長の代わりに?」

「はい。主演舞台の初日に社長の席が空席なのは、まずいので。ちょっと社長に急用が入っちゃったんです」

「いいよ」

 はるは、軽々と頷いた。

「大丈夫ですか」

 関君の言葉に。

「いいよ」

 もう一度、はるは頷いた。

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