第25話

 レアラ様が王都の城外にジェダ辺境伯家の旗を立てられました。

 その寸前まで王位を争っていた王子達は勿論、貴族士族も恐れをなして王城に籠っていまいました。

 王都の城壁を護るのは、末端の兵士だけとなってしまいました。

 情けない話でございます。


 しかしレアラ様にも、堅牢な王都の城壁と城門を力技で破るすべはありません。

 それに、勇気をもって我らに対している兵を殺す訳には参りません。

 殺すのは、恐怖に振るえて王城内に籠っている王族と貴族士族です。

 勇気も武力もない貴族士族など、無用の長物だからです。


 ここでレアラ様の策が始まるかと思われたのですが、想定外の事が起こりました。

 レアラ様に助けを求めた自警団が蜂起したのです。

 王都内の下町を中心に、民が手に手に武器を持って立ち上がったのです。

 それでなくとも兵力不足だった王国軍です。


 圧倒的多数の住民に対抗する事など出来ませんでした。

 王都城壁と城門を確保するだけで必死だったようです。

 とてもではないですが、王族や貴族士族が籠る王城にまで手が回らなかったようです。

 漢気のある者が攻城用の兵器を持ち出し、王城内に入り込んだそうです。


 そうなると、後は一気に崩壊するだけでした。

 王城内の王族や貴族士族に、自ら剣を取って戦う勇気などなかったのです。

 ひたすら逃げ回り、最後には金銀財宝を差し出して命乞いをするほどだったそうです。

 最初から最後まで、自警団だけで戦っていたら、最後も変わっていたかもしれません。


 ですが、戦いが長引くほどに、邪悪な者も戦いに参加したそうです。

 いえ、戦いに乗じて、盗みや強姦を働いたのです。

 最初は裕福な商家や地主の家を襲っていた者達も、王城の城門が破られてからは、王城内に押し込んで、貴族や王族の館を襲撃略奪しました。


 今迄貴族夫人だ貴族令嬢だと言って、民を虐げていた女達が、今度は身分卑しい犯罪者に嬲り者にされました。

 火の付いた薪を押し付けられ、身体中を焼かれました。

 それは男達も同じだったそうです。


 両刀使いや特殊な趣味のある男が、貴族士族の当主や若様を嬲り者して、最後は火の付いた薪で全身を焼いたのだそうです。

 天罰覿面とは言えないほどの惨状だったそうです。

 ですがその凶行が行われている時に、レアラ様と私は城外に布陣していました。


 自警団の者達がその様な凶行に気が付いたのは、王城の奥深く、王宮に籠っていた王子や王妃を捕らえた後でした。

 彼らも悩んだようですが、全ての裁きをレアラ様に任せると覚悟を決めて、犯罪者が逃げださないように、兵が降伏して確保できた城門を厳しく閉じ、我々を王都内に迎えたのです。

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