第10話

 城下での王国軍の凶行に、怒髪天を突きながらも、何とか怒りを飲み込み、王太子と側近貴族を捕らえるべく、本陣に接収された貴族家の城に入った私達でしたが、そこでも怒りに我を忘れる凶行を目にすることになりました。


 城に中では、王太子と側近貴族が、その城の持ち主である貴族の夫人と令嬢を、代わる代わる嬲り者にしていたのです!

 一番幼い令嬢は、まだ、七つか八つに見えました。

 それを目にした途端、私の堪忍袋の緒が、音を立てて切れました。


 ドゴッ!

 ボコ!

 バギ! 

 ドッコーン!


 私が王太子を叩きのめす前に、戦闘侍女達が動いていました。

 私に暴力を振るわさないように、代わりに罰を与えてくれたのだと思います。

 いえ、彼女達も怒りの限界を超えたのでしょう。

 私には、彼女達より早く動く力はありません。


 ですが、その所為で、私は自分の怒りの持っていく場所を失ってしまいました。

 ですから、せめての事として、治癒魔法は使いませんでした。

 王太子と側近貴族は、痛みにのたうち苦しめばいいのです。

 それに、腐れ外道より先に、癒してあげなければいけない人達がいます。


 貴族の夫人と娘達に、癒しの魔法を使ってあげなければいけません。

 身体中に、激しい打撲と裂傷を負っているのです。

 自殺を選ばないように、心の傷も癒してあげなければいけません。

 聖女の力を持つ身として、やるべきことがあるのです。


「よく聞け。

 騎士の誓いを破った、卑怯卑劣な王太子と貴族を、再び捕虜としたぞ。

 しかもまた、脱糞するという、騎士にあるまじき臆病を晒したぞ。

 恥知らずなこいつらは、命乞いをして、再び騎士の誓いを立てたぞ」


 王太子と側近貴族達は、城のバルコニーで晒し者になっています。

 ネラに吊し上げにされた彼らは、恐怖のあまりまた失禁脱糞しました。

 そして失禁脱糞した下着を、自分達で頭上に掲げて、情けなく命乞いをしています。

 二度目の命乞いをしなければいけないくらい、ネラの形相が怖かったのでしょう。


 いや、聖の魔法を解いて、姿を現した私達全員が、恐ろしい形相をしていたと思います。

 城下での怒りに加えて、城内での怒りに打ち震えてたのです。

 その姿は、とても妙齢の女性とは思えない、鬼の形相だったことでしょう。

 だからこそ、配下の王国軍将兵の前で、恥知らしな命乞いが出来るのでしょう。


 でも、これで終わりではありません。

 バルコニー前に集まっている、王国軍の雑兵にも、キッチリと落とし前を付けてもらいます。

 住民に対して行った、凶行の罰を受けてもらいます

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