第26話

「起死回生の策をだせとは言いません。

 わずかでも対応できる策はありませんか?」


「莫大な利益の一部を使って、遠国より食糧を輸入しましょう。

 幸い戦力増強の為に建造した軍船があります。

 船便ならば大量の食糧を早く輸送する事が可能です」


「備蓄食糧はそれで大丈夫でしょう。

 ですが物価高騰で食糧を手に入れられなくなった民は、どうするのですか?」


「王家が直接雇いましょう。

 多少損は致しますが、得た利益とは比べ物になりません。

 暴動などを防ぐためにも、三食付きの仕事を与えます」


「仕事と言っても限られるのではありませんか?」


「確かに限られてしまうでしょうが、国が高騰した物価に慣れるまでの事です。

 物価高で食料品と釣り合いの取れなくなった品物は、売れても職人が暮らしていけなくなり、職人が品物を作らなくなるので必ず品薄になります。

 品薄になればその品が今度は高値となります。

 どうしても必要な品でなければ、輸入してもいいですし、王家の日雇いに応募している者を職人に戻す事もできます」


「どうせなら国のためになる仕事を与えたいのですが、何か候補はありますか?」


「貿易国家を目指すのなら、兵士を募集して訓練するべきです。

 ある程度練度が上がれば、魔境や魔窟に派遣して、食糧や素材を集めさせる事も可能です。

 貿易が一時的とお考えならば、川攫えや道づくりに使うのがいいでしょう。

 軍船で購入してきた食糧も、馬車で運ぶよりは川船で運んだ方が大量に早く輸送できます。

 ですがその為には、川幅が広く水深も深くなくてはなりません」


「それがいいでしょう。

 まずは川攫えと道づくりから始めましょう。

 どちらも女子供でも加われます。

 三食付きで集めてください」


「はい、承りました」


「それと、兵士にするのも悪い考えではありません。

 ですが常備兵力とすると国庫の負担になります。

 後々魔境や魔窟に派遣して元の取れる者を、今から厳選しておいてください。

 それと、そうですね。

 軍船と商船の建造を増やしてください。

 そうすれば船大工や周辺の職人にも三食を与える事ができるでしょう。

 軍船と商船ならば、なんとでも使いようがあるでしょう」


「名案だと思います。

 マイヤー王国が勝つにしてもゲラン王国が勝つにしても、必ず戦後にひと悶着あると思われます。

 ホワイト領はこの国唯一の港を有しています。

 絶対に他国に奪われる訳には参りませんし、制海権は必ず確保しておかねばなりません」


「では全て軍船にしますか?」


「その方はよいと思われます。

 軍船が商船を兼ねる事はできますが、商船を軍船として使うのは無理があります。

 それに商船は王家が建造しなくても商人が建造しますし、他国に建造を依頼する事もできます。

 それに本当に戦争になったら、軍船で商船を拿捕する事も可能です」


「ビリーの言う事はもっともです。

 その方法で民に食糧が回るように、暴動が起きないようにしてください」

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