第24話

 各国の対応は予想以上でした。

 どの国にも表に出せない弱みがあるのかもしれません。

 普通に考えれば、基盤の弱い我が国を併呑しようとするのが普通です。

 もしくは、ホワイト王家と血の絆を結び、隣国に攻め込む野望を抱くかです。

 どの国がどんな野望を抱いているにしても、併呑されるのだけは阻止しなければなりません。


「姫様。

 ゲラン王国のライアン第三王子殿下とセオドア王弟殿下が参られました」


 レイスリー宮中伯が話しかけてきます。

 私が式部大臣に抜擢したので、王宮内で行われる儀式を執り行ってくれています。

 今回はゲラン王国が派遣してきた大使との謁見です。

 ライアン殿下が全権大使で、セオドア殿下が後見人で副全権大使です。

 しかしそれは建前で、私との御見合いに来たのです。

 とは言っても、担当貴族が内々で伝えてきたその話も本気ではないでしょう。

 本音はホワイト王国とマイヤー王国の同盟阻止でしょう。


「麗しき御尊顔を拝し奉り、恐悦至極に存じ奉り候う」


 仰々しい挨拶です。

 真心が籠っているように見えますが、恐らく違うでしょう。

 私が疑心暗鬼になっているのかもしれませんが、探るような目付きに見えます。

 今頃随行員が情報収集に走り回っているのでしょう。

 私も密偵を送りこんでいますが、鳥肌が立ってしまいそうなくらい嫌な感じです。


「遠路遥々御越しくださり、ありがとうございます」


 私も丁寧に返事します。

 堅苦しいのは苦手なのですが、今回は初対面ですから仕方ありません。

 それに、ゲラン王国の人間に気を許す心算は有りません。

 両人とも一八〇センチを超える長身で、なかなかの美男子ではあります。

 髪と瞳が黒く、魅惑的でもあります。

 ですが国を危険に晒すような恋をする気はありません。


「交易を認めていただいたお礼として、父から進物を預かって来ております。

 どうぞお納めください」


「ありがとうごいます」


 さすがに軍馬の名産地です。

 今回の大使館設立土産に金銀財宝と三百頭の名馬を贈ってくれました。

 ですが締める所は締めています。

 三百頭全てが雄の騙馬で、種馬として使う事ができません。

 自国の有利な部分は決して譲る気はないのです。

 ですがこれで全てが知れました。

 ゲラン王国は我が国と永続的な友好関係を求めていません。

 一時足止めできれば十分と考えているようです。


 これで私の基本方針が定まりました。

 危険は避けねばなりません。

 ゲラン王国がマイヤー王国を併呑するような事になったら、その後は我が国を狙う事でしょう。

 そんな事にならないように、マイヤー王国と同盟しなければなりません。

 他の隣接国が攻め込んでこないように、友好関係を結ばなければなりません。

 少なくとも敵対しないようにしなければいけません。

 そしてゲラン王国の国力を削ります。

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