第16話

「どうする、アルフィン。

 かなり強く申し込んできているぞ」


「御受けするかどうかは、マイヤー王国の情報、特に王家の情報を調べてからです。

 今までの情報だけでは決める事はできません」


 またしても私に婚約の申し込みがありました。

 ですが今回は少々毛色が違います。

 今までは我が国と直接国境を接する国が婚約を申し込んでいたのですが、今回は間に別の国がある、直接国境を接していない国からの婚約申し込みです。

 具体的には、先年の争いの時に私が最も警戒した北のゲラン王国の更に北東に存在する、マイヤー王国と言う国からの婚約申し込みです。


 国境を接していないと言う事は、直接の利害が少ない国になります。

 国内で王家と貴族が争うことになっても、頼る事ができないと言う点と、介入されないと言う点があります。

 ホワイト王家にとって何方が弊害となり利点となるかは、ホワイト王家の状況によりますので、何とも言いようがありません。

 現状で考えれば、私個人としては利の方が大きいでしょう。


「確かに情報がなければ何も決められない。

 だが、条件がいいのも確かだ。

 王子の持参金と台所領が今までの条件の倍だ。

 特に海岸線の領地が王子の台所領と言うのは大きい。

 もっと多くの塩を、塩が自給できない国に輸出できるようになる」


 確かに父上様の申される通りです。

 仕方なかったとはいえ、前王家を打倒したばかりのホワイト王家は、国内貴族に対する統率力が低いのです。

 それと前王家の資産を没収しましたが、近隣諸国で最も貧しかった前王家の資産は、借財の方が多いと言う悲惨な台所状態でした。

 近隣諸国の侵攻を防ぐために、ホワイト家の資産で前王家の借財を返済しなければいけないと言う、余りにも情けない状態だったのです。


 私に婿を迎えるにしても、父上様に側室を迎えるにしても、生活費は相手に自弁してもらわなければなりません。

 それは国内貴族を相手に選んでも同じです。

 王族として血を受け入れる代償としての持参金は、当然持ってきてもらいます。

 同時に王族としての体面を保つ為の費用は、本人はもちろん産まれてくる子供も永遠に必要なのです。


 その為には、台所領として領地を割譲してもらわなければなりません。

 それに婿にしても側室にしても、一人でやって来るわけではありません。

 身の回りの世話をする側近はもちろん、護衛の騎士や従士もやってきます。

 そんな者達の給料は、やって来る婿や側室が払うべきものです。

 その為には、一時的な持参金では不足するのです。

 永遠に収入が得られる、台所領を割譲してもらう必要があるのです。

 それが隣国の倍と言うのは大きいですが、きっと何か腹に一物あるのでしょう。

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