侯爵令嬢はデビュタントで婚約破棄され報復を決意する。

克全

第1章

第1話

「余は真実の愛に目覚めた。

 家同士の政略結婚など認めん。

 余の愛はここにいるマリーに捧げられている。

 だからアルフィンとの婚約は破棄する」


 リアム王太子殿下が、いきなり私と婚約を破棄すると言い出しました。

 余りに酷いやり方です。

 私と婚約破棄したいのなら、もっと前に分からないようにやればいいのです。

 家同士の政略結婚が嫌なら、父親の国王陛下に申し上げて、内々に解消すれば、私もここまでの大恥をかかされることはないのです。


 一生に一度、私が社交界デビューするデビュタントで、満座の席で婚約破棄を宣言するなんて、余りに冷酷非情なやり方です!

 このような恥辱を受けては、一生笑い者にされてしまいます。

 私一人だけではなく、ホワイト侯爵家の体面が丸潰れです。


 今までだってそうです。

 いつも他の令嬢を側に侍らせ、自分は一切努力しないのに、私の勉強の邪魔をして、努力している私を馬鹿にしてきました。

 それでも国のため家のためと思い、王妃候補として、将来即位される王太子殿下に相応しい淑女になるように、それはそれは厳しい練習をしてきました。


 それが全て無駄になってしまいました。

 私一人の事ではありません。

 我がホワイト侯爵家は、私を立派な王妃にするために、家をあげて並々ならぬ努力をしてきたのです。

 それが全て水泡に帰したのです。


 そもそも私とリアム王太子殿下の婚約は、王家から申し込んできたものなのです。

 ホワイト侯爵家から申し込んだ婚約ではないのです。

 それどころか、父上様と母上様は何度もお断りしたのです。

 父上様と母上様は、伏魔殿のような王宮に私を送りたくないと、いつも嘆いて下さっていました。


 そんな父上様と母上様に、王の権力で無理矢理この婚約を認めさせたのです。

 それをこのようなやり方で婚約を破棄するなど、絶対に許せません。

 国王陛下は知らない事かもしれませんが、世継ぎをこれほどの愚か者に育てた責任は、ひとえに国王陛下にあるのです。

 その責任はとって頂きます。


「分かりました。

 一生に一度のデビュタントで、これほどの恥をかかされたのです。

 もう婚約は破棄するしかないでしょう。

 ですがただでは済ませません。

 私にもホワイト侯爵家にも、貴族としての矜持がございます。

 報復させていただきます」


「報復だと?

 謀叛でも起こすというのか?

 おもしろい。

 余に逆らってタダで済むと思うなよ!」


「お待ちください、兄上。

 今のお言葉は余りに理不尽でございます。

 このような場で婚約破棄を公表するなど、人情も礼儀もわきまえない、畜生の所業でございますぞ!」

 

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