夢の中限定の彼女

旭日 陽

第1話  入学





新しい春の風が…俺の背中にそっと吹きかける………

この春から…俺はこの場所で…新しい人生を歩むのだ!

と、当時の俺は思っていたらしい。

この理想が直ぐに崩壊するのも知らず…









「……」

桜の舞う坂道。

ここは横浜駅から京浜急行電鉄の普通電車に乗って3駅目の駅の黄金町駅から坂道を歩くこと5分〜8分。私立三春中学校高等学校。

立地が横浜というのもあり、駅から学校の道中は坂と階段のオンパレードだ。黄金町駅の周りはパチンコ屋が多く、少々治安が悪いが東京の中心部ほどではない。そんな場所が俺のこれからの6年間世話になる場所だ。

「よし!ここで人生を変えてみせる!」

拳を握りしめて、春風の追い風に背中を押されながら俺はランドセルとは違う重さのリュックを背負って学校の校舎に入っていった。


(紹介が遅れたが、俺の名前は神崎太賀(かんざき たいが)。今年からこの三春中学校高等学校に中学1年生として入学する人間だ。

何故、俺が私立の中学を受験したかと言うと、それはかなり個人的には残酷な話になる。まぁ1言で言えば小学校の頃にいじめを受けていて、その連中から逃れる形で地元の中学には行かずにここに来たという事になる。自己紹介はこの辺にして本編に戻ります。)

「」

新しい環境、新しい空気に胸を踊らせながら俺は校舎の階段を登っていく。中学校校舎はここ数年で新しく建設されかなり綺麗だ。1年生は最上階の5階のようだ。

「俺の〜新生活〜♪」

呑気な鼻歌を歌いながら、疾走感に満ちた足を運び、あっという間に教室がある5階に到着した。そして、手前の教室のドアを思いっきり開けた。

「えーと1年4組は…ここか」

「えい!」

その広大な教室の光景に俺は目を奪われて、1秒くらい魂が抜かれたような気がした。

受験の時も教室に入ったが、これからここで生活すると思うと、親近感がある。

「俺は…前の席か…」

黒板に貼ってあった座席表を確認し、席につく。1番前の席だった。

周囲を見渡すと、既に話している生徒が何組か見受けられた。この中学は坂道の道中に三春小学校があり、受験生の他にも小学校から上がってくる生徒もいる。

俺も早速近くの人と話掛けようと辺りを見渡した。すると丁度、隣の席に女子が座っていた。特別、可愛くはなかったが俺は環境を変えるためにこの中学に入学したので、友達入学なろうと思い、話しかけた。

「ど…」

(いや、このいう場合はどう話し掛けるべきなのか…無難に宜しくお願いします。でいいのか…?いや、でも少し誘ってみるか…いや、それだとおっさん臭いし妄想垂れ流しじゃねぇか!…いや、でも…)

俺は再び隣に座っている女子を見る。

巨乳だった………………………。

世の女性には申し訳ないが、男性という生き物は女性の第一印象は胸であることが多い。

本当に申し訳ないが。

(まぁ友達くらいには…)

そんな下心を持ちながら、俺は隣に座っている女子に話しかけた。

「こ…こんにちは。俺は隣の席の神崎太賀」

「これから宜しく…」

するとその女子は俺を上から下まで見てから俺の言葉に返答した。

「私は坂木友恵(さかぎ ともえ)」

「こちらこそ宜しく…」

俺と友恵は挨拶言葉を交わした後、何も話さなかった…

理由としては俺の驚異的なコミュ障でこの後の話題がなかったからだ。なので、お互いに会釈して席についた。その時の俺はとてつもない背徳感があった。





「はーい。席についてー。」

教室の前方のドアが開き、20代前後の若い女性の先生が入ってきた。

「本日よりこのクラスの担任を務めます

 南川亜希です。宜しくお願いします」

先生が挨拶をしたが、クラスは数名の生徒が拍手する程度でほとんどが黙り込んでいた。

恐らく、皆もまだ緊張が解れていないのだろう。俺も先生の方を見ようとそっと顔をあげた。そこで俺が見たのは………

「うわっ…でけぇ……」

…………巨乳だった………………

またしても胸を見てしまった。

男の理性的に。

(くっ…友恵よりデカい……)

そんな事を思い、俺は再び先生の方を見る。

いや、別に変態ではないからね。

勘違いしないでよね。

隣の人や担任の先生が偶々巨乳だっただけだからね。

「はい。この学校はキリスト教の学校なので

 本日の入学式は礼拝堂で行います」

「そういえば、この学校はイ○ス・キ○スト

 を異常に拝む学校だったっけな」

俺は小声でそんな言葉をこぼした。

「じゃぁ礼拝堂に移動します。聖書と賛美歌

 を持って列ごとに私のあとについて来て下

 さい。」

先生はそう言うと、再び前方のドアを開けて、廊下に出ていった。それに続く雛鳥のように生徒もその後に続いていく。

「俺もそろそろだな」

俺はこの機会にクラスにどんな奴(女子)が居るのかを見ておこうと思い、辺りを見渡した。すると、自分よ少し後ろの方にそこそこ可愛い子がいた。

「あの子可愛いなぁ…」

「胸は…少し貧相かな…」

いや、本当に不可抗力だからね。

わざとじゃないからね。

そこの理解はお願いします。

「入学式から戻ってきたら、名前を調べよ」

俺はまるでストーカーの常習犯のようなゲスい言葉を捨て台詞として吐き、前の人に続いて教室を出て、入学式が開催される礼拝堂へ向かった。


階段は他の人に合わせて降りるため、通常の自分よりも低速で階段を降りた。また一列で降りているとはいえど、他のクラスとも途中で合流しているため、礼拝堂の入り口につく頃には、朝の通勤ラッシュのような窮屈感があった。そして、入学式が始まった。

「えー。今年度はこの三春中学校高等学校に

 入学して頂きありがとうございます。改め

 て今年度の新中学1年生を大きな拍手で迎

 え入れようと思います。皆さん拍手をお願

 いします。」

毛の薄い校長先生の言葉で俺たち1年生はこの学校に迎え入れられた。

毛の薄い……ようはハゲです。

そんなこんなで、校長先生の挨拶も終わり、新中学1年生の先生方の挨拶も終わり、最後に全員で賛美歌を歌った。

「キリスト教の学校って何かある度に賛美歌

 を歌うのか……」

恐らく、ここにいるほぼ全員が思った事を俺は代弁して言った。

恐らく、誰も聞いていなかっただろう。

とても残念だ…。



時間がすぎるのも直ぐだ。

入学式も終わり、気付けばさっきまでいた教室に戻って来ていた。俺はすかさず、ここを出る前にやろうと思っていた事を実行に移した。

「あの娘は…田町木実(たまち このみ)と

 いうのか…」

俺の頭の中で彼女の名前をインプットした。

そして、先生が戻ってきて帰りのホームルームを始めた。入学式の日なので今日は式さえ終われば直ぐに帰れる。

「それじゃあ気をつけれ帰って下さい」

担任の南川亜希はそう言って教室を出ていった。クラス中に机と椅子を引く音が響き渡る。俺もカバンを背負って、教室を出た。

周囲を見ると、入学1日目だというのにもう友達を作っている奴もいた。

「ったく気が早いなぁ」

俺はそう独り言をいって教室そしてこの学校を後にした。

「初日は特に何も無しかぁ…」

「あっでも女子と話せたのは1歩リード

 かなぁ」

俺はそんなことを言いながら、黄金町の駅前を歩いていた。果たして(宜しくお願いします)という1言は会話という枠組みに所属出来るのか有無は皆さんにお任せします。


家は学校よりも東京寄りなので、俺は上り電車に乗車した。3駅行くと、日本の大都市の1つ。横浜駅に到着する。俺はその駅からエアポート急行に乗車するために一度、乗っていた普通電車を降りた。そこで俺は学年は違う、同じ三春中学校の制服を来た生徒が横浜駅の改札に向かって行くのが見えた。俺はそいつらは横浜駅の繁華街に遊びに行くのだろうと予測した。

「ふん。俺は陽キャのチンパンジーハウスな

 んて行かねぇからな」

誘われてもいないのにそんな事を言った。


ー間もなく2番線にエアポート急行羽田空港行電車が参ります。危険ですから黄色い線の内側でお待ち下さいー

「2番線ご注文下さい。空港線直通のエアポ

 ート急行………」

駅員の放送と共に俺が乗ろうとした電車は横浜駅に入線して来た。そして日本特有のしっかりと乗車目標のところにドアが来た。


ドアが開き、その車内に入ろうとした時、俺は綺麗な花を見るかのようにその車内を見た。理由はその車内に見たことがある人がいたから。理由はその人がつい30分ほど前に見たからだ。理由はその人は俺が入学初日にも関わらず、目を付けた人だったから。

「え……田町木実…………何故………」






       第2話につづく

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