聖女は教会に裏切られ、王子達に輪姦され、奈落の底に落とされました。

克全

第1話

 オリヴィア・ローウェルは貧しい農家の次女だった。

 善良な分だけ気が弱く、何時も虐げられていた父。

 優しいが余り身体が強くなかった母。

 正義感が強く、近所の子供達の大将だった兄。

 誰よりも優しく可愛かった姉。


 家族から溢れんばかりの愛情が注がれていた。

 常に空腹だったが、幸せな幼少時だった。

 だが、オリヴィアが奇跡を起こせたことが不幸の始まりだった。

 オリヴィアが優しく、父親が気の弱い善人だったのが災いした。

 最初は、隣村の餓鬼大将と喧嘩した兄のケガを治したのが始まりだった。


 優しく育っていたオリヴィアは、同じ村の人達の病を治し、骨折を歪みなく元通りに治した。

 村の人達が飼っている牛・山羊・羊の病気を治した。

 寝たきりだった村長の母を完治させた。

 村人は、今迄は大金を払っても完治する保証のなかった病気やケガを、完璧に治してもらえるようになった。


 普通なら大金を得られただろう。

 だが、父親の気の弱さと善良さに村人は付け込んだ。

 なんだかんだと理由を付けて、礼金を払わなかった。

 それでも家族は幸せだった。

 わずかな礼物があり、空腹の時間が少なくなったからだ。


 だが、そんな幸せは長くは続かなかった。

 近隣の村々までオリヴィアの評判が広まった頃、教会から使者がやってきた。

 オリヴィアの癒しの技を見た神官が、オリヴィアを聖女に推薦した。

 むりやり家族から引き離して。


 神官はオリヴィアに、オリヴィアが教会に行けば、家族が御腹一杯食事が出来るようになると言った。

 寒さに震えることがないように、有り余る薪が与えられると言った。

 雨漏りに苦しめられないように、立派な家が与えられると言った。

 全て嘘だった。


 家族には、オリヴィアは聖女として幸せに暮らせるようになると言って、何の保証も与えず連れ去った。

 教会から下賜されたわずかな支度金は、神官が着服して私腹を肥やした。

 教会も神官も腐っていた。

 民の心を安らかにするのではなく、民から搾取する事ばかり考えていた。


 オリヴィアは教会の奥深くに幽閉された。

 教会に大金を寄付する者だけを治療させられた。

 オリヴィアは金の生る木だった。

 死なせれば大損だった。

 病気にさせても治療に不都合が出る。


 だから、飢える事はなかった。

 寒さに凍える事もなかった。

 だが、何も教えられなかった。

 知恵がつけば逆らうと考えた教会は、一切の知識を与えなかった。


 知識が得られなかったオリヴィアが気になるのは、家族の事だけだった。

 だから、世話役のシスターに家族の事を聞いた。

 返ってくるのは、幸せに暮らしていると言う嘘だけだった。

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