俺達は海へ! その4

 しばらくの間、泳いだり、もぐったり、水のかけ合いなんかで遊び、少し休憩しようと海から上がろうとすると。


「痛っ!」


 俺の後ろで夏樹が小さく声を出す。

 愛染と桃白は遠く離れた所でまだ泳いでいた。


「大丈夫か!?」


 すぐに近づくと、夏樹が俺の肩を掴んで来た。


「ごめん。ちょっと足つっちゃった。」

「俺が背負って戻ろうか?」

「いい。……痛て。」


 夏樹は一歩踏み出そうとすると、痛みのせいで苦しい顔になる。


「ごめん!」

「えっ!?ちょ!!」


 少し恥ずかしいが夏樹を背負う。無理して歩かせたくはない。


「つかまってろよ。」

「………うん。」


 夏樹を背負いながら、海から上がるため、一歩ずつ、進んで行く。

 海から上がり、美優さん達がいるブルーシートの所まで来ると、そっと夏樹をおろす。


「ありがとう。」

「いいよ。お前は無理しようするな。」


 さっき、海の中で無理矢理歩こうとした夏樹を叱る。夏樹も頭を下げ反省した。


「……胸の感触楽しんだ?」

「あっ?そんなの感じるほど余裕無かったわ。」

「そ、そう……」


 愛染ならこんな時でも胸の感触を楽しんでそうだな。


 俺の中で勝手に愛染の印象が下がると、俺もブルーシートの上に座る。


「そういえば、足塚先輩と雪野姉妹先輩は泳がないんですか?」

「雪野姉妹先輩ってなんじゃそりゃ………」


 美優さんは「あはは」笑う。


「私は眺めてるだけで充分かなー。」

「…………俺もだな。」

「なら雪野先輩は?」

「私もいいや。泳ぐのあんま好きじゃないし。」


 じゃあなんで海に行くの賛成したんだと疑問に思ったが、追求はしなかった。


「あっ、そうだ。足がつった時の対処法を調べよう。」


 スマホを取り、足がつった時の対処法を調べる。


 あっ、あった。


「えー、夏樹、今から言う事をやってみてくれ。1、足の力を抜きながら、筋肉の緊張をほぐしつつ、足首をゆっくり回す。

 2、膝を伸ばした状態で座り、つっている方の足のつま先をもってゆっくり手前に引く。

 3、立った状態で壁に手を当てながら、アキレス腱を伸ばすように足を前後に開き、つっている方の足のふくらはぎをゆっくり伸ばす。 ……だそうだ。」


 ネットにのっていたものをそのまま言い、夏樹に実践させたが、突然、夏樹が困った表情をする。


「3は壁が無いからできないんだけど。」

「誰か!壁になってくれる人はいませんか!」

「もっちんがやったら?」

「あっ、そうですね。」


 後ろを向き、手をパンと叩く。


「よし、俺を壁代わりに使ってくれ。」

「う、うん……」


 緊張しているのか、夏樹の手がなかなか背中に触れない。


「どうした?遠慮なんかしなくてもいいぞ?」

「わかってるけど……」


 そう言い、おそるおそる背中に手を付けてきた。


「ひゃん!!」

「もっちん。気持ち悪いよ。」

「……すいません。」


 女の子が自分の背中に触れているシチュエーションにドキドキしながら、声を堪える。


「どうだ?夏樹。」

「うん。ちょっと楽になってきたかも。」

「まだやるか?」

「ううん。もう大丈夫。」


 そう言って夏樹は背中から手を離す。もう少し堪能してもよかったがまぁいい。


「夏樹はしばらく休憩だな。」

「うん。 ––––どうして山本君も座るの?」

「ん?もう泳ぎ疲れたから休憩だ。なんせ初めての事ではしゃぎすぎた。」

「……そうなんだ。」


 そう言い、ブルーシートの上に寝転がる。ブルーシートが広いおかげで、体全体が収まる。そして斜め横には最高の谷があった。


 さすがに見すぎなのもまずいと思い、海の方へ視線を移す。


 目に映ったのは愛染と桃白が水をかけ合いバトッていた所だ。


「……あいつら、以外と仲いいよな。」

「そうだね。愛染の下ネタによく桃瀬っちがつっこむ事が多いし以外とね。」


 雪野先輩の話しを聞くと余計に思う。


「あいつら相性良さそうだし付き合っちゃえよ。」


 恋のキューピットこと、このもっしんが言うのだから間違いない。こいつらお似合いだぞ。


「…………愛染が桃白とお付き合い……。」


 足塚先輩がそんなのは想像できなそうな顔で2人を見つめていた。毎回思うけど、愛染って足塚先輩に嫌われてるの?


 と、思っていたのだが、どうやらみんな、愛染が付き合うとか想像できないと言ったような顔をしていた。なんか、同情するよ。

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