俺達の夏休み その1

病院は学校からそう遠くない場所にあった。

俺は雨宮に「また、会いに行く」と言い別れた。


辺りはすっかり夜で、外灯が暗い夜道を照らしていた。

そんな夜道を俺は一人で歩いていた。


何か雨宮が喜びそうな物を買ってお見舞いにでも行こう。


その時、スマホが震える。


スマホを取り出すと愛染からメールが来ていた。


『来週に生徒会で海行くんだけど慎二も来るか?』


来週は特に予定がなかった為、『行く』と送っておいた。




***


家に着くと俺はベッドの上で考えていた。


俺は今日、病気の雨宮と出会った。

彼女は今も病気と戦っているのに俺は呑気に海に行ってもいいのかと。


罪悪感が俺を蝕んで行く。


「どうしたらいいんだろう。」


俺は罪悪感から逃れたいが為に、本を手に取り読んだ。


そうしていると眠気がきてそのまま眠る事にした。




朝起きると時間は10時30分だった。


今日は特にやる事はなかったが、家にいても暇だから外に出る事にした。



ショピングモールに着くと、水着を買わなきゃいけない事に気が着き、買いに行くことにした。



いい水着がないか探しているととある人物をつけた。


「よぉ愛染。お前も水着買いにきたのか?」


愛染が水着を眺めていた。


「ん?おぉ、慎二か。おう。後、ビキニを見てて想像してた。」

「そ、そうか……」


相変わらずの残念さに少し呆れながらも水着を選びを再開する。


「慎二って好きな人いねぇの?」

「えっ? ……今のところはいないかな。」


突然の問いに困惑したが今はいないと香織の事は伏せておいた。


「お前は?」


俺の返しに愛染はうーんと頭をひねる。


「いねぇな。可愛いと思う子はいっぱいいるけどな。」


愛染はいだずらっぽい口調でそう言った。お前、黙ってたら凄いモテるだろうに……。


それからも俺達は水着選びを続けた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る