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俺はまた手伝う。

体育祭からいくつかの日が過ぎ、俺達はようやく、香織と空の距離を縮める作戦が実行されようとしていた。


予定日は6月6日。この日しかみんなの予定が合わないらしい。


そして、香織と空をくっ付けさせて、今の気持ちとおさらばしよう。そう俺は心に決めていた。





***

6月3日。 

学校では夏服の期間なのだが、みんなは半袖ではなく、長袖を巻くって登校している。俺もクーラーが効き過ぎて寒い時があるから長袖で登校している。


家から最寄りの駅に着き、電車を待っていると金髪の女子高生が駅のホームに上がってくる。

 

「あの子って確か………」


香織がマリナって呼んでたな。うん。可愛いな。


近くに住んでいるのか?それとも乗り換えなのかわからないが、こんな可愛い子と通学路が一緒ってなんかいいな………


………駄目だ。俺は主人公だが、期待するな。今まで期待して来た分、不幸になって帰って来たんだ。どうせ今回もろくな事が起きない。


するとマリナは俺の事に気づいたのか、少しずつこっちへ向かって来ていた。


やめて、凄い嬉しいけど来ないで!問題を起こさないで!!


「山本先輩ですよね?」


やっぱり何かのイベントだったー!いやだなー!今度は俺にどう苦しませたいんだ!?


「あ、あぁ。」


「私、三倉みくらマリナって言います。」


「あぁ、香織から聞いてるよ。」


「香織先輩とも知り合いなんですね。意外。」


マリナは少し驚いた顔を作る。何だよ。意外って。だが、その前に少し気になるところがあった。


「香織先輩?」


「えぇ、佐藤先輩とも知り合いなんですよね?先輩って。」


「あぁ。そうだけど。それがどうした?」


すると急にマリナはもぞもぞし始める。あっ、嫌な予感がする。


「実は……先輩に…相談があるんですけど……」


あっ–––––この先の展開読めたわ。あれだ。香織と同じく、恋愛相談だ。


「そ、相談って何かな?」


「じっ、実は体育祭の時に、佐藤先輩に一目惚れして………それで、その……付き合える手伝いをして欲しいんですが……」


やっぱり。あぁー。これってラブコメだよね?なんで俺じゃ無くて他の奴がラブコメしてんだよ。


「そ、そうか。まぁ、別にいいけど。」


「いいんですか!!」


マリナはキラキラした瞳でこっちを見つめて来た。やべぇ、この子、瞳が青くて綺麗だな。


オッケーしたけど、よっしーは恋愛バカだから………難しいな。


「せっかくですし、今日は一緒学校行きませんか?」


「あ、あぁ。いいよ。」



それから、学校に行っている間、マリナに凄い質問攻めされた。やっぱり断っとけばよかった。




***


授業が終わり、靴を履きにロッカーに向かっていると、後ろから朝に散々聞いた声がした。


「せーんぱい!」


「なんだよ。三倉。」


振り返るとマリナがニコニコとしていた。もう恐怖でしかないわ。


「一緒に帰りませんか?」


「断る。」


「な〜んでー!?」


マリナは駄々をこねる子供のような態度をとっている。昨日の俺だったら可愛いと思ってだんだろうなぁ。


「今日は疲れたんだ。一人で帰らせてくれ。」


「仕方ないですね。それじゃ!」


意外とすんなり諦めてくれたマリナは先に帰っていく。





そう思っていた俺が馬鹿だった。

マリナは駅で、俺を待ち伏せしていたのだ。


「奇遇ですねー先輩。」


「絶対わざとだろ。」


「えぇ?なんの事ですか?」


「………いや、なんでもない。」


もう諦めた俺はおとなしく、マリナと帰ることにした。


通学路が一緒でいいなって言ってた朝の俺をぶん殴ってやりたい。


電車に乗った後、マリナは隣に座って来た。


「先輩。明日、どこかに出かけませんか?」


「はっ?」


突然のデートのお誘い。こいつ、よっしーの事が好きなんじゃないのか?


「佐藤先輩とくっつくための作戦会議です!」


「あっ、そういうことね。でも、明日学校じゃないのか?」


「明日は創立記念で休みですよ?」


「あっ、そうだっけ?」


「そうです。」


「なら、別にいいけど。」


「やった!ありがとうございます!」


マリナは悪戯に微笑むと時間と集合場所を俺に伝える。


「––––って言う事でよろしくお願いします!」


「あぁ。」


その後は、よっしーの事を聞かれながら、帰ることになった。


次の章も俺のターンは無しか?

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