俺は向き合う決心をする。

閉会式は無事終わり、雪野先輩が「点、いじんなくてよかったね。」と俺に囁いてきた。


「そうですね。みんな想像以上に凄かったですしね。」


「そうそう!特に君のパン食い競争は凄かったよ!負けるわけにはいかない!!っていうのがバンバン伝わってきたよ!」


「………先輩はなんでパン食い競争に出なかったんですか?」


俺は前々から聞こうとしていた事を聞いてみた。


「え?だってしんどそうじゃんー。やるわけないよーー。」


「こ、この……!!」


「どうしたの?」


「な、なんでもないです………」


言いたい事はあったが、それを抑える。


「それより、こんなとこいてていいの?」


「?どう言う事ですか?」


「決着をつけなくちゃいけない人がいるんでしょ?」


雪野先輩は真剣な顔をして、俺に問いかける。



「–––––そうですね。ここの片付け、少しの間だけ任せていいですか?」


「うん。行ってらっしゃい。」


「はい!」





***

それから俺は屋上に来ていた。



「やっぱり、ここにいると思った……」


屋上の真ん中に立っている黒白に言葉を投げかける。


「今回の勝負は俺の勝ちだ。お前には二つのうち、どれか一つを選べって言ったよな………」


「そうだな………」


黒白は静かにそう答えた。その顔は覚悟を決めたようだった。



「やっぱりあれは無しだ。」


「–––––––は?」


俺の言葉が予想外だったのか、黒白は呆気にとられていた。


「高校生の小さな勝負で人間関係と人生を潰すっておかしいかなって思ったんだ。」


「–––––何だよ………何だよそれ!お前、甘ちゃんかよ!俺はお前を含めた4人の関係を壊そうとしたんだぞ!もし、この勝負俺が勝っていたら本当にしていた。なのにお前はやっぱりあれは無しだ?馬鹿だろ!?」


黒白は俺に初めて憤りを見せる。


「あの時のお前を見ているようでとてもイライラするぜ!あーくそ!!」


黒白が言っているあの時とはおそらく本当の俺あいつの事を言っているのだろう。


「あの時の俺を見ているようで……か。」


少し前から決めていた。心に決めた事を初めて口にする。


「俺、自分が記憶を失って出来た偽物の山本慎二なんだって知って心に穴が空いたような気分だった。」


黒白が俺を少し睨みながらも話を聞いてくれている。


「でも、決めたんだ。本当の俺と俺の過去に向き合う事にしたんだ。モヤモヤしてたら嫌だろ?それならいっそ全部知ってしまえって感じ?」


「…………お前の事、悪役みたいだなって言ったけど、本質は何も変わって無いんだな。他人を傷つける事が出来ない優しさが……」


黒白は呆れたような顔をし、言葉をはいた。


本質は何も変わって無いか。知らず知らずのうちに、あいつと考える事が一緒になってるのかもな………なんて。


「そんなもん俺にはねーよ。ささっ、これで話は終わりだ。生徒会の仕事に戻らせてもらうぜ。」


「待て。」


「あっ?何だよ。」


「夏樹の事、どうするんだ?」


夏樹愛華。昔の俺と相思相愛だった関係。だが、今はまるで他人のような反応。どうするって言われてもな。


「…………まだ、わからん。とりあえず、気持ちを整理させてからだな。」


「そうか………」


「それじゃ。」


そう言い、俺は屋上を去り、生徒会の仕事に戻った。


とりあえず、これで一息つけるかな?


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