俺は悪役でもやってみせる。

 次の日の昼休み。


 よっしーと空と飯を食う予定だったが、後で行くと言っておいて、3組の教室に来ていた。

「黒白、勝負の事で話があるから来てくれ。」

 俺が黒白を呼ぶ。昨日とは逆だったが、反応は全く違う。

 昨日は自然な流れで、黒白は俺を連れ出したが、俺は堂々と勝負の事を言ってやった。

 みんなは「勝負?」「なんの話?」やらざわつき始めていた。

 そして驚いた顔で俺と黒白を見ていた夏樹愛華もいた。


「–––––わかった。」

 この状況を察して黒白は俺におとなしくついてくる。



「で、なんだ?」

 やってきたのは昨日と同じ屋上だ。ここでなら誰にも聞かれないし、安心できる。

「お前は昨日、一方的に俺が負けた時の事を言ってきたけど、やっぱり俺だけあるのは不公平だよな………?」

「何が言いたい?」

「もし、この勝負、俺が勝ったらお前にはどちらか一つ選んでもらう。一つ目は夏樹愛華に二度と関わるな。これは俺も一緒だよな。それでもう一つがこの学校を辞めてもらう。

  お前にとっちゃどっちも大きいかもしれんがいいよな?俺は選択の余地もなく四つの事をされるだぜ?そんぐらいやってもらわないと。」


 我ながらなんて事を言ってるんだ……と思うがここは押し切ってやる。

「できないとは言わせないぞ。もし、そんな事を言ってきたらこの勝負は破棄だ。いいよな?」


 黒白は俺を睨んだ後。

「––––––わかった。やってやるよ。」

 吐き捨てるように言った。

「それにしてもお前、記憶が失ったからってここまで変わるか?」

「…………そんなの知るか。俺は俺で昔の……本物の俺とは違う。だからやるからには徹底的に潰してやる。」

「–––まるで悪役だな。」

「……そーだな。」

 俺はそう言った後、屋上をさる。

 本当にこれじゃ悪役だよな。一応主人公なんだけど……。





 ***

 遅れて昼食を済ませた後、俺とよっしーは1組に戻り、香織と空の事を相談していた。

「もっしん。結局空の事はどうするんだ?夏樹愛華の事を好きなんだろ?」

 ぐっ!その事を今言わないで欲しい……が。

「んー。空と香織の思い出をたくさん作ってもらって空の恋愛対象を変えてもらうとかか?」

「なるほど!さすがだな!もっしん!」

「まぁ、俺もバカだからこんなのしか思い浮かばないけどな。」

 よっしーは成績は優秀だが、恋愛に関してはバカすぎるからな。


「とりあえず、香織達の件は体育祭の後でいいか?俺も生徒会に入って準備もあるし。」

「––––おう!わかった!」

 昼休み終了のチャイムがなる。


 やれやれ、気付けば多忙な日々になりそうだな。いかにも主人公って言うか?でも勝負に関しちゃ俺が悪役みたいな感じだけど……。

 でもやるからには本気でぶつかってやる。

 負けた時、本気じゃなかったとか言い訳をしたくないからな。だからあいつにも本気でぶつかって来て欲しい。


 ん?立ち直るのが早いって?まぁ、それが今の俺の長所の一つだからな。


 そう語りかけていると5限目開始のチャイムがなった。

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