先任伍長ダイン·ダムドレッド

モモスガ

第1話 ガスタルスヴェイン

この感覚はいつまで経っても馴染めない…

「先任伍長!デグザラの機動兵器がこちらの射程圏に入るまで1時間を切り接近中です!!」

ため息に似た甘ったるい声だが力強く彼女は告げた。

「マユハラ操士…頼むからスペックスーツをちゃんと着てくれないかな?」

彼女はスペックスーツと呼ばれた対被曝層繊維を何万と織り込まれた宇宙服を腰の下まで降りたままで下着を晒して無重力のひろびろとしたコックピット内をうろうろしていた。

「ダムドレッド先任伍長いいじゃないですか~目の保養になってますし!」

彼女の透き通る様で柔らかそうな体をマジマジとまるで絵画を愛でる風にカイエル砲撃士はキレイに剃り揃えた髭を撫でながら、ダムドレッドに訴えた。

「レンベル管制士、こちらの位置との相対的なタイムラグを計ってくれ!」

ダムドレッドは四人が十字に座るコックピットの一番後方から、ダムドレッドから見て左手前方に座る冷たい表情の若い青年に告げた。

「先任伍長、指揮系統の独断は全線本部に確認してからの方が良いのでは?」

冷たい表情でレンベルはダムドレッドに冷やかに伝えた。

「いいんじゃないの?現場で臨機応変にしてたら…」

カイエルは携帯食のチョコレートブラウニーケーキを頬張りながら口を挟んだ。

どこのメーカーかは知らないが、しっとりとしていて甘くて口溶けも良く宇宙食独特の嫌な喉ごしも無くカイエルは食感を楽しんだ。

「結構です…」

レンベルは冷やかに答えた。

「この子はナッツ入りが好きなんだよ」

マユハラ操士は無重力の中、器用にスペックスーツの袖を通しスーツのジッパーを閉じながら目線は一番前方の自分のコックピットの計器を見ながら言った。

ダムドレッドはレンベルに対しての優しい姉の様なマユハラの言葉に笑みがこぼれた。

「ガスタルスヴェイン単機では、デグザラの18メートルクラスの小型三機の相手は戦術的には不利だからな、こちらは30メートルクラスで小回りが効かない。全線本部には私の権限での作戦行動で受理してもらう。」

元々、「先任伍長」と言う階級は軍階級には存在しないが、要はベテラン軍人でエリートではないが今までの実績と軍本部からの特命で「全線本部付き部隊隊長補佐」と言う役職に、ガスタルスヴェインに搭乗が決まった際に先任伍長と言う形で任命され、ダイン·ダムドレッドは異議を唱える間もなく三人のメインパイロットと共に、五十歳を間近に迎えた年齢になって、この流線形に頭と手足の生えたロボットに乗せられるはめになってしまった…


新興の「アレスタス帝国軍」は、三年前の惑星ペズンへの侵攻により「デグザラ連合共和国」との武力衝突に突入し、今現在に至っていた。








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