和図鑑

影宮

着物

着物の構造はシンプル。

大雑把にいえば四枚の長方形の布を縫い合わせただけ。

人に着せてみると体の右側、左側、右腕、左腕に一枚ずつ長い布をかけた状態。

着物は体のまわりで布が余る。

着付ける時は左右の衿先が体の脇にくるように深く合わせる。

帯を締めるとシワができるが、布の余りは両脇へ寄せて胸もとや背中にシワができないようにする。

余った布をたたんで整え腕を降ろせば布の余りは脇の下になり見えない。

前で深く合わせるから正面では二重に布を巻いている形。


*男性の着物について

脇は全部縫われている

振りと身八つ口がない

対丈(身長と裾の長さを同じに仕立てたもの)だからおはしょりはない

足もとに向かって裾がすぼまる

帯の位置は腰より下

腕を動かしやすくする袖の遊びの部分がある

衿は首につける(首にそって立てる感じ)

帯は腰骨でひっかけてへその下で締めるから前下がり


イメージ

短い袖 子供っぽく品がない

帯の位置 高いと子供っぽい

着丈が短い 裾広がりはだらしがない


各部名称一覧

つま   肩山

褄先  袖付そでつけ

おくみ   背縫い

裾山そでやま

各部位の寸法

袖幅

身丈

ゆき

身幅

袖丈

前幅


縫い目と折り目

折り山のライン。縫い目ではなく肩山・袖山の折り目。前身ごろと後身ごろの境界で袖の中央を通るライン

袖付

ほぼ背の真ん中を通る背縫い

掛け衿(衿を保護するカバーにあたる)と地衿の境目

衽線。衽と左前身ごろを縫い合わせた線


女性の着物

おはしょりがある

袖に振りがある(縫い付けられずにあいている)

身八つ口がある(滅多に見えることはない)

帯が大きいから補助具として帯あげと帯締めがある

裾に向かってそぼまる

袖口は男性より小さめ

胸は決して強調されず巨乳の人も帯の内側におさまる

衿をぬく(首筋と衿の間にこぶし1つ入るくらいあける)

首でなく肩の上に衿がのるイメージ


帯むすび

女性の帯むすびで最もポピュラーなのはお太鼓

1 帯あげで帯枕をくるみ帯あげを前でむすぶ

2きれいな帯山ができたら帯底の位置を決める

3余った部分を内側に折り上げ帯締めで固定


男性の帯むすび定番

貝の口 女性より小さくつくる

片ばさみ 武士に好まれた

兵児帯 片わなむすび。大人から子供まで


歴史

一般的に着物は裾まである和服=長着を指す。長着は江戸初期に普及した小袖が原型になっている。室町後期~江戸初期の小袖に男女の違いはなかった。

どちらも対丈(足首までの長さ)で身幅が大きく、ゆったりとして袖は短め。振りはなく脇は縫い付けられていた。この小袖が現代まで続く着物の原形。

帯は着物がはだけないようにする単なる留め具だった。細い布や組紐を使いむすび目も前、後ろ、横と自由。

そもそも小袖は支配階級である公家が表着として着ていた大袖に対する小さな袖という意味。庶民階級の日常着であり公家階級では大袖の下に着る下着だった。


狩衣かりぎぬ

平安後期

あけくび(当時の表着はあけくびのものが主流)

袖口を縫わない

脇も縫わない


庶民

庶民の小袖の丈は短かった


直垂じかたれ

鎌倉期

支配階級が公家から武家に入れ替わると正装は簡略化していく。丸首の上衣「あけくび」から現在の着物と同じ前で合わせる打ち合わせの首もとになった上衣の直垂が登場


肩衣かたぎぬ

安土桃山期

直垂の袖を取り去った形の肩衣が登場。ついに小袖が表着になる


江戸期に入り50年もすると小袖の仕立てが変わってきた。

男女の小袖

現在の着物とほぼ同じ形。身幅が細く布がだぼつくことがなくなりすっきりしたスタイルになる。袖幅が広くなり腕が隠れるように。袖丈も長くなった。

女性の小袖

女性の方が変化が大きい。身幅が細くなったが身丈はひきずるほど長くなっていく。帯が徐々に大きくなり留め具としての実用性より装飾性が増していく。この傾向は時代が下がるほど強くなり帯締めや帯あげがないと帯を締められなくなる。


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