正義おばけ

ぬゆふ

学校を休んだ。

いじめられていた訳では無いのだけれど、僕は少し容量が悪かったようで。他人の目線や声、気分、雰囲気、全てが僕の体を突き刺した。


先生の話を聞かず騒いでいた人に注意をしたら、偽善者だと罵られた。気持ち悪い正義かざしてるだけだって言われた。嫌われた。一人になる気がした。

それで、悪いことを悪いというのが怖くなったのだ。その行為を見聞きするとしんどくなった。僕はただ深呼吸をして、注意できない自分が嫌いで、そんな自分を正義だと思っていることも大嫌いだった。


ママはこの程度のことでと言った。パパは社会に出たらやっていけないぞと言った。

僕は、僕はその日学校を休んだ。


パパが会社に行って、ママが僕を叱りながら起こそうとしてきた。僕は頑張って抵抗して、でもそれがママをさらに怒らせたみたい。

仕方なく、僕は学校へ行くふりをすることにする。通学路と逆の方へ、駅の方へ続く道を走ると、呼吸が軽くなったような気がした。


深呼吸をする。怒られるんじゃないかとどきどきする。このまま死ぬんじゃないかとどきどきする。通勤ラッシュの時間を乗り越えた駅のホームは、少し疲れているように感じた。

人が少ない気がしたけれど、僕は椅子に座ることができずにバランスゲームを始めるしかなかった。景色がくすんで見える。もうすぐ冬が来るのだな、と思った。


深呼吸をする。ポイ捨てをする大人、自転車を放置する大人、ネコババする大人、唾を吐く大人、大声で話す大人。僕が簡単にぺしゃんこにされてしまう気がした。息が苦しくなった。ただただ深呼吸を繰り返す。それはまるで、自ら過呼吸になろうとしているようだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る