話をしよう
「1つ昔話をしよう。
今よりも未来の話、オレの話であって別の誰かの話だ。
そこはこことよく似ている世界でな。双つ影と人類との闘いは全世界に広がっていた。そこでオレは、双つ影を退治する立場だったオレは彼女を、彼女という関係ながらも双つ影になってしまった彼女をやむなく殺した。この手でな。その時の絶望はよく覚えている。誰かが受け止めてあげれば、こんな悲劇は回避できたんじゃないのか? そう絶望しつつ、オレも命を絶った」
広げた手のひらから炎の柱が立つ。
「ただ無効にするのなら、それは受け入れた事にはならない」
手のひらから出てきた炎の柱はまるで意志を持っているように渦を巻き始める。
「無効化ではなく、吸収しているとでもいうのか?」
「そう。総てをオレの中に受け入れよう。そして解き放とう」
身を守るために無意識に使って吸収した炎が、風景をまるで紙のように燃やし始める。
「こんな力……ありえない! 正気でいられるはずが!」
辺りはすでに炎に包まれ、焼かれた風景の変わりに無が広がり出す。
「今のオレなら判るんだ。受け入れられずに親しい人を亡くした今なら。この哀しみを受け入れられる事ができる」
広げたままの手のひらからさらに炎が飛び出し、辺りはすでに炎か無しか広がっていない。
「これが例えどんな悪夢だとしても、それが夢なら冷めなくちゃいけないだろう? 一体どこから夢だったのかはさすがに判らないがな」
苦笑して
「兄さんすまん。次に柚依ちゃんに会ったら兄さんに蹴られる事を覚悟で抱擁するかもしれないよ」
炎は総てを焼き尽くして消えて、無しかない空間でやがて一筋の光が生まれる
。
「さてと、起きるかな」
背伸びをして光が差す方向へと足を進める。
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