第4話 お雑煮合戦

「具だくさんは譲れないの」


 雑煮の話である。新年を控え、ぼくと妻はお餅レシピをめぐって論争中だ。


「うちのお雑煮は、とにかく具をいっぱい入れるの。大根と人参と里芋と、コンニャクにネギに豚肉」


 いや、それもう豚汁だよね。お雑煮はもっとシンプルなのがいいよ。透きとおった出汁に丸餅が沈んでいて、三つ葉とゆずの皮が散らしてあるやつ。


「豚汁じゃないもん。荒巻鮭も入ってるもん」


 カオスぶりに拍車がかかったね。


「具のない雑煮なんて雑煮じゃない。栄養バランスも悪いし」


 形勢はぼくに不利。しかし、退却にはまだ早すぎる。


「ゆずも贅沢。ちょっとしか使わないのに」


 お正月くらい贅沢したっていいでしょう。残ったゆずはお風呂に入れてもいいし。


「ゆず湯か……」


 いまならゆずサワーもつける。自家製ゆずサワー、絶対おいしいよ?


「……わかった」


 大将閣下、わが軍の逆転勝利――


「具は全部食べてあげる。かわりにゆずの皮は全部あげる」


 …………え?

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