第18話 弥生の上司・報告書に驚く
弥生の上司・
弥生が御神託を完了し、自分の
神薙は、弥生に御神託を終えた直後であることもあり、今日は帰るように言ったのだが、弥生は今日中に報告したいと言って譲らなかった。
相変わらずの生真面目さに、神薙は呆れながらも好きにさせた。
弥生が報告書をまとめ、神薙の部屋をノックしたのは20時頃だった。
相変わらず報告書をまとめるのが速い。
神薙は、弥生の報告書を受け取ると、その場で軽く目を通そうと読み始めた。
しかし、神薙は報告を読むのが途中でとまり、目を見開く。
そして、顔を上げて弥生の顔を見つめた。
予想だにしない内容である。
神薙は弥生に説明を求めた。
そして、弥生の口から一通りの報告を聞くと、神薙は黙り込んだ。
しばらくすると神薙は、いつも通りの表情に戻り弥生を労った。
「ご苦労様、よくやったね。」
「いえ・・、私よりは男巫の拓也さんのお陰です。」
「いや、確かに男巫の働きは大きいが、君がいてこそだ。」
「そんなことはないかと。」
「まあ、そんなに自分を控えめな評価にするな。」
「・・・はい。」
「疲れただろう、もう帰って休んだ方がいい。」
「はい。」
「明日、休みなさい。」
「いえ、それには及びません。」
「・・・。」
「それでは、これで帰ります。」
「うん、お疲れ。」
「・・・」
「どうした?」
弥生は何かいいたげな顔をして寸の間、黙り込んだ。
しかし、直ぐにいつもの無表情な顔に戻った。
「いえ、何でもありません。失礼します。」
「そうか・・。」
弥生は退出するためドアまで歩き、ゆっくりとドアを開いた。
そして、一度振り向きお辞儀をしてドアから出ると、そっとドアを閉める。
神薙はしばらくの間、弥生が出て行ったドアを見つめていた。
やがて
ブラインドを持ち上げると、窓一面に夜景が見えた。
20階から見る夜景は綺麗だ。
半月の月明かりが青白い高層ビル群を照らし出している。
そして、高層ビルの谷間を縫って続く道に、車のテールランプが彩りを添えていた。
神薙は夜、一人になると、こうして夜景を見る。
一度、仕事から離れて、考えをリセットするためだ。
しばし夜景を眺めた後、席に戻った。
帰り際の弥生の何か言いたげな姿を思い出した。
何が言いたかったのだろうか・・。
気になるが言おうとしてやめたのだ。
これについては、本人が話したくなれば話すだろう。
それまでは忘れることにした。
問題は今回の御神託だ。
弥生の報告を
どう考えても、今回の御神託は異常だ。
迦楼羅天様からの御神託にも驚かされたが、それに
これは、どういうことだろう?
普通、御神託は1柱の神様のお言葉であって、他の神様が絡むことはない。
それから神社関係者でない者を、神様が男巫に任命したということもだ。
一体、神界で何が起きているのだろうか?
もしかして、弥生の能力により起こったことなのだろうか?
弥生は確かに
でも、あくまで1つの御神託に
それなのに、今回は何故に2柱の神様が絡んできたのだろうか?
弥生は確か戸隠・宝光社の系列の巫女で、この神社で祭られている神様は
なぜ天表春命様は、弥生に複数の神様から御神託を受けるようになされたのだろう?
それも、今回は迦楼羅天様と、猿田彦大神様が絡んでいる。
一体何がどうなっているんだ?
まあ、神様の御心は人間の考えなど及ばない。
考えても
それにしても
よく神様の怒りを買わなかったと思う。
弥生の報告では、拓哉は猿田彦大神様と良き関係を築いているという。
そんな事があるのだろうか?
まだしも巫女なら神様と良き関係を築くことは分からないことはないのだが・・。
しかし解せない。
なぜ霊脈についての御神託が迦楼羅天様からなのだろう?
猿田彦大神様なら、鼻面稲荷社に祭られているので、迦楼羅天様よりも霊脈について分かっていたはずだ。
それなのに今回は迦楼羅天様の御神託だ。
まったく訳が分からない。
そして弥生だが・・。
あまり感情を出すことのない子なので、ほんの僅かな違和感があった。
いつも平常心をまとっているのに、今回の御神託で何かあったように思える。
どこが可笑しい?と言われると、なんとなくとしか言いようがない。
彼女のことだから、この後の御神託に影響が出るようなことはないとは思う。
それと男巫・拓也について一応、調査をしておくか・・。
たぶん、調査をしても一般人であること以外、特になにも出てこないとは思うが・・。
それにしても、神様のなさることは分からないと思いながらも考えてしまう。
・・・今日は、仕事はやめて飲みにでも行くか。
そう考えて、仕事をやめた。
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