第650話 ただいま
無事検査が終わり、康生の体に異常がないことが分かった。
そして検査が終わると周りで待機していた数百人もの兵士達はすぐさま部屋を退出していった。
康生はそんな兵士達を見て、体を縮こまらせていた。
「とにかくこれで無事が分かったので、英雄様にはしっかりとあれからのことを説明しましょう」
「う、うん。頼むよ」
そんな康生を見て、上代琉生はわずかに安堵しながら康生が意識を失ってから今までのことを説明するのだった。
それは康生が倒れ、化け物になっていっているという話しから、国王達との会議でエルが提案した話。
その後、リリスとメルンの全面協力の元、康生の体から魔力を排出し、康生の体に魔力が溜まらないような魔道具にて強制的に眠らされてた。
そして主に上代琉生率いる部隊の活躍の元、無事に魔力から生まれる生物の解明が進められた。
研究が始まってから約三年後、ようやく化け物についての情報も集まりいよいよ康生を復活させることが出来ることとなった。
そうして現在、無事康生が目覚め、無事例の化け物になっていないことが判明したという流れだった。
「――なるほど。つまり俺はもう人間じゃなくなったということか」
「はい。そうなりますね。といっても体の主要器官は動いているようですから、体を動かすエネルギーが魔力に代わったと思ってて下さい」
「魔力がエネルギーか……」
康生は自分の身に何が起こったのかを知り、今一度自身の体を見下ろす。
感覚的には生前と比べ特別に何かが変わったという感覚はない。
しかし皆の話を聞く限りだと、どうやら康生の体は普通じゃくなったようだった。
「そ、その……。先に謝っておくわね。そんな体にしてしまって本当にごめんなさい」
するとそんな康生の様子を見たエルが頭を下げる。
続いて他のメンバーも同様に頭を下げようとしたが、康生は慌ててそれを止める。
「やめてくれよ。皆俺のために必死に頑張ってくれたんだろ?だったら何も文句はないよ。むしろ俺の方こそ迷惑をかけてごめん」
すると今度は逆に康生が頭を下げる。
「それとありがとう。またこうして皆と会えて本当に幸せだよ……」
康生は若干目に涙を浮かべてそういう。
あの時。人型の生物との戦いの最中、康生はここで死ぬと覚悟していた。
だからこそ最後の最後に、康生はすぐさま敵と心中する選択をすることが出来たのだ。
でも、こうして生きて皆と会えることが出来て康生は幸せで溜まらないようだった。
「うんっ、私達も幸せだよっ」
するとそんな康生を見てエルが思わず康生の元に駆け寄る。
「おかえり康生っ!」
「うん、ただいま」
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