第614話 人型
「あぁっ?」
リナさんとの同時攻撃が炸裂し、物体が僅かに弱ったように見えたザグはすかさず攻撃を繰りだそうとする。
『メルンさんっ!すぐにお願いしますっ!』
だがAIの切羽詰まった声が響くのだが、それがザグの耳に入ることはなかった。
「えっ?えぇっ?」
AIに言われ、メルンは戸惑いながらもしっかりと魔道具を構える。
リナさんは一体何が起きているのか分からないように眉をひそめていた。
「な、なんだよこりゃ……」
そして当のザグはというと、物体を目の前にして思考が止まったように動きが停止していた。
『逃げてっ!』
すぐさまAIが声を張り上げてザグに言うと、ザグは遅れたように反応して体を動かそうとする。
だがそれよりも先にザグに向かって物体が伸びる――否、手が伸びるのだった。
「ちっ!」
理解不能な現状に慌てながらもザグは咄嗟に避けようとするが、反応が遅れたザグは捕まりかけてしまう。
だがAIの指示によって構えられた魔道具により、その手はすぐに消滅した。
「一体なんだっていうんだよっ!」
無事に解放されたザグは悪寒を感じながらもすぐに異様なまでに慌てて退避する。
「何があったザグっ!」
あまりにも様子がおかしいからか、リナさんはすぐにザグの元へと向かう。
「分からねぇ。あれは一体なんなんだよ……」
ザグは僅かに怯えながら物体を指さす。
「――なんなんだあれは?」
そしてリナさんもまたすぐに物体を見て動きを止めてしまった。
『二人共どうしたんですかっ!?』
二人の異変に気づいた上代琉生はすぐに無線を飛ばす。
『――今映像を送ります』
だがそれに答えたのはAIだった。
メルンが持っていた機器を通じて目の前の光景を上代琉生達に送信する。
『これは……』
AIからもらった映像を見た上代琉生もまた、リナさん達同様に僅かに動きを止める。
『正面を避けつつにすぐに攻撃っ!だが危険と感じればすぐに退避しろ!』
僅かに動きを止めた上代琉生だが、すぐさまリナさん達に指示を飛ばす。
それにより、二人は止めていた体を動かし、すぐに物体の後方に移動し攻撃に移ろうとする。
「くそっ!とにかく早く倒せなきゃいけねぇじゃねぇかっ!」
「そうだっ。だから速攻で行くぞ!」
背後へと回った二人はすぐに物体に向かって突撃していく。
だが、
『すぐに退避して下さいっ!』
AIの叫び声が響くと同時に物体が小さく萎んだ。
「くそっ!一体なんなんだよっ!」
ザグは苛立ちを隠せない様子で目の前のソレを睨む。
「…………」
ザグの睨んだ先――先ほどまで物体がいた場所には全身を白く染めた人型の何かが浮かんでいた。
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