第512話 地震
「く、くそっ!何をしたっ!?」
突然動きを止めた康生は物体の中に隠れている指揮官を睨む。
どうやら力を入れようにも、思ったように体が動かない様子だった。
「ふっ、貴様がバカな奴で助かったよ」
「な、なんだとっ!?」
必死に動かそうも全く体が動かせない。
それどころか魔力もろくに使うことが出来ない状態だった。
「大丈夫か康生っ!」
必死に抵抗しようとする康生の元にザグが駆けつける。
「体に力が入らないっ!手伝ってくれっ!」
「なんだとっ?」
ザグはすぐに康生の体を引っ張るが、それでも康生の体はぴくりとも動かなかった。
「どうなってるんだよっ!」
いくら力を入れようも康生の腕は抜けないままだ。
「く、くそ……」
さらに心なしか康生の声が弱くなっていく。だんだんと元気がなくなっているようだった。
まるで康生の力が吸い取られているかのようだ。
「く、くそっ……!」
康生の異変に気づいたザグは当然すぐにでも救出しようと躍起になる。
そもそも宙に浮くだけでザグは魔力を消費し続けている。
だからこそ時間がかかればかかるほど、状況?悪化していく一方だった。
「せ、せめてっ……」
だんだんと意識が朦朧となっていく中でね康生は最後の力を振り絞ろうと顔をあげる。
「バカっ!余計なことはするなっ!」
ザグはすぐに康生を忠告するが、素直に忠告を聞かずに最後の力を振り絞る。
「せ、せめて中にいるこいつさえやれればっ、俺はっ……!」
「おいっ、よせっ!」
力がなくなっていく中で、最後の力を振り絞るように康生は腕に魔力を込める。
「くそっ!やめろって言ってるだろうがっ!」
康生が変なことをする前に救出しようとザグは躍起になる。
「ごめんザグ。でも、しょうがないんだよ……」
康生はそれだけ呟いて呪文を唱える。
「くそっ!抜けろよっ!!」
ザグが精一杯叫ぶ中、康生もまた精一杯の力を振り絞ったのだった。
「エルっ!状況を教えてちょうだいっ!」
「奈々枝ちゃんっ!」
戦場へと戻ってきた奈々枝はすぐにエルに状況を確認する。
康生が先に行ってしまったせいで、奈々枝は少し遅れての到着になった。
怒りで我を失っている康生のことを心配しながらすぐに現状把握につとめる。
「大変なのっ!康生がっ、康生がっ……!」
「ど、どうしたんですかっ!?」
奈々枝を見るなり泣き崩れたエルを見て、奈々枝はわずかに慌てる。
(一体何が……?)
エルのことを気遣いながらも、奈々枝はすぐにでも情報を手に入れようと周囲にいた部下に声をかける。
だがその瞬間、あちこちから爆破音が鳴り響き、まるで地震でも起きたかのように地面が震えたのだった。
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