第509話 轟音

「おしっ!だんだん小さくなってるぞ!このまま行くぞお前らっ!」

 雷の物体と対峙しながらザグは全体に向けて声を張り上げる。

 いくら攻撃しても感触がない敵のため、全体の指揮が下がっているのを察したのだろう。

 ザグは皆を励ますように叫んだ。

 実際、ザグの言うように敵の大きさは当初のものよりも確実に小さくなっている。

 でもザグは小さくなっていくのを見ながら不安を感じていた。

 何故なら、今までの流れは先ほど経験したものと一致しているからだ。

 倒したかと思えば、こうしてまた目の前に敵が現れた。

 だからこそ、何か確実に倒す方法を考えねばいけないのだがそれが思いつかない。

「くそっ、早くこいよっ!」

 兵器を破壊するといった康生達の到着をザグはひたすらに待つ。

「ほぉ、化け物共のくせによくやるな」

「あぁっ?」

 突如として聞こえた声にザグは一瞬、意識を向ける。

 だが敵の猛攻撃が終わらない中、完全に集中を切らすわけにはいかない。

 何せ敵の攻撃は範囲攻撃かつ、威力がとんでもないものばかりだ。

 近くで戦っている以上、一瞬の油断も許されない。

「しかし、貴様らももう終わりだよ」

「さっきからてめぇは誰なんだよっ!」

 目障りな声にザグは苛立ちを表に出す。

 よくよくみると、その人物は宙に浮いていた。

 人の身をしながらも、宙に浮くその人物を見てザグはわずかに驚愕する。

「今はお前なんかに構ってる暇なんてねぇんだよっ!くそっ、早く康生達がくればっ……!」

 瞬時に上にいる敵が普通の敵ではないと判断したザグは、わずかに焦る。

「安心しろ。あのガキはじきに来るさ」

「あぁ?」

 その返答にザグは思わず変な声をあげてしまう。

 そもそも。敵の頭上にいるにも関わらず攻撃されないのをザグは疑問を感じる。

「くそっ、また何か面倒なことになってやがるなっ」

 先ほど康生達のことを何か知っている様子だったのも気がかりになる。

 だが今のザグには目の前の敵に対処するのが精一杯だった。

「おっ、喜べそろそろ到着するぞ」

「さっきからうっせぇんだよっ!」

 頭上でごちゃごちゃと話されてザグは先ほどから苛立ちを見せる。

 何が到着するのかは知らないが、とにかく今のザグは無害なそいつを無視することを決めたようだった。

『ザグっ、お願いっ!康生を止めてっ!』

「あぁ?」

 突然、ザグの元にエルから無線から届いた。

 だが無線の内容を理解するよりも前に、ザグの耳に轟音が届くのだった。

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