第506話 意識

「お前の両親は貴様らと同じ反逆者。つまり、どういうことか分かるよな?」

 反逆者。それは敵が康生達を見ているものと同じという意味。

 となれば、そんな者がどうなるのかは簡単に想像できる。

「お、お前ら、まさか……っ!」

 それでも康生は認めたくないのか、指揮官に対して噛みつくように言葉を吐く。

 頭で考えないように、必死に指揮官を睨みながら。

「あいつらも我々に抵抗しなければ死なずにすんだものを」

 必死に歯を食いしばる康生を見下すように、見方によっては煽るようにため息混じりに言う。

「まぁ、あいつらは元々危険な思想を持っていた。力こそが全てだとな。だからあいつらはいなくなって当然だったんだよ。お前と同じようにな」

 トドメと言わんばかりに指揮官は両親共々、康生に向かって言葉を吐き捨てた。

「英雄様……」

 流石に康生を気遣ってか、奈々枝は反論する代わりに康生の元へと近づく。

 奈々枝も、康生がどれだけ両親のことを大事に思っているかは知っている。

 だからこそ両親の死を言い渡された康生を心配するようにそっと肩に手をおいた。

「聞く耳をもっちゃだめだよ。英雄様の両親は立派な人だよ。だからあんな奴の言う言葉なんか聞いちゃだめだよ」

「あぁ。分かってる。分かってるから……」

 だけど康生は奈々枝の手を振り払う。

「俺はあいつらに復讐する」

「えっ?」

「安心しろ。絶対に殺しはしない。殺さない代わりにたっぷり後悔させてやるっ」

 康生の表情からは憎しみや怒りが溢れ出るほど、険しく、今にも歯が砕けそうなほど食いしばっていた。

「ま、待ってっ!落ち着いて英雄様っ!冷静になって!」

 明らかに異常な様子を見て奈々枝はすぐに止めようとする。

 戦いにおいて冷静さをかけばどうなるかは分からない。

 むしろ利用される恐れだってあるのだ。

 これは上代琉生から教わったことでもある為、奈々枝は必死に康生を止めようと手を伸ばす。

「大丈夫、すぐに終わらせるっ」

 しかし奈々枝が康生に触れる寸前、康生はその姿を消してしまう。

「ふははっ!そうだっ!そうじゃなくちゃ面白くないっ!」

 奈々枝はすぐに視線を指揮官の元へと移す。

 そこでは康生が指揮官の前の地面に拳を突き立てていた。

 どうやらたった一瞬であの場所へと移動したようだ。さらには指揮官はそんな康生の攻撃を回避している。

「だめ英雄様っ!」

 明らかに全力で指揮官に攻撃したであろう康生を見て奈々枝は咄嗟に大声を出す。

「ふはははっ!いいぞっ!それでこそあいつらの子だっ!そのままどんどん力を解放してくれよっ!」

 だが康生は、不適に笑う指揮官にしか意識を向けていないようだった。

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