第466話 実行

「はっ!」

 康生が力を込めると地面に大きなクレーターができ、同時に砂埃が辺り一体にまき散らされる。


「ちょ、ちょっと何してるのよっ!」


 そして先ほど大きな悲鳴をあげていたエルは無事に康生からおろされたが、巻き上げる砂埃に咳をする。

「ご、ごめんエルっ。でも出来るだけ注目を集めるようにって上代琉生に言われていて……」

「それは知ってるけど……。でももうちょっと安全に降りられなかったの?」

「今のはできるだけ安全にしたつもりだったんだけどな……」

 なんて呑気に会話をしていると、横から新たに着地する音が聞こえる。

「貴様!お嬢様の悲鳴が聞こえたが、何をしたっ!」

「ま、まぁ、落ち着けリナ。流石のエルもあの脱出装置に驚いたんだろうよ……」

 視線を向けると、リナさんと時雨さんが着地していた。


 そう、地上に響いた大きな爆音は康生達がトラックから脱出するための装置だった。

 脱出方法とはトラックの座席が飛び出す、さながら絶叫マシーンのようなものだった。

 そのため空中を飛べるリナさんと康生が、他の皆をかついで敵陣の前まで降り立ったというわけだ。

 勿論、他の部隊には事前にトラックに積んであったパラシュートを装着してもらっている。

「さて、皆それそれいいですか?」

 と、エルと共に康生に抱えられていた上代琉生がゆっくりと前に進む。

 前を向くと、砂埃が巻き上げられる中ゆっくりとだが前方に巨大な軍団が見える。

「あぁ、いつでも大丈夫だ」

 それを見た康生もゆっくりと上代琉生の隣へ並ぶ。

「――貴様はっ!?どうしてここにいるっ!?」

 砂埃が晴れてお互いの姿が見え始めた時、先頭にいた兵士か声をあげる。

「気づいたな」

「そうみたいですね」

 先頭に立つ康生と上代琉生はお互いアイコンタクトをとる。

「聞けっ!」

 そして康生は手に持っていた拡声器で声を張り上げる。

「俺達は人と異世界人達の共存関係を望んでいる!俺達は決して争いなど求めていない!だから話し合おう!平和な世界のために!」

 事前にエルと話して決めていた言葉を康生は張り上げる。

 その康生の声を聞き、兵士達は一斉にどよめく。

 が、しばらくすると敵軍の方から声が張り上げられる。

「貴様等は我々人類の敵だ!話し合うことは何もない!我々は平和のために貴様等敵を殲滅する!」

 だがそれは決して友好的なものではない。

 覚悟はしていたが、やはり戦う運命なのだと康生は少しだけ心が痛くなる。

「――それじゃあ作戦通りにいきますよ」

「……あぁ」

 敵の意志を確認した上代琉生はすぐに作戦を実行させるのだった。

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