第464話 空中

「ひるむなっ!もうすぐ異世界に到着するはずだ!我々の目的はすぐそこだ!」

 数々の妨害工作を乗り越えながらも、確実に進軍を進める敵兵。

 そして目的の異世界の地へと着実に近づいていた。

 奈々枝もできるだけ長く、そしてザグ達もまた出来る限りの妨害を続けていたが、それでも完全に動きを止めることは出来ず、次々に破られてばかりだった。

 だがそれでも確実に足止めには成功しており、敵兵の当初の予定の時間よりも大幅に遅らせることが出来ていた。

 後は康生達を待つのみ。奈々枝達はただひたすらに到着を待ちわびながら妨害工作を続けるのだった。

「くそっ!まだ康生っ!」

 次の罠設置地点へと移動しながらザグは愚痴をもらす。

 いくら妨害をしようとも、敵に見つかるわけにはいけないので慎重になりながら作業を進めている。

 だからこそ短期にザグにとってはむずがゆいのか、短調作業に飽き飽きしているようだった。


「お兄ちゃんっ!すぐに皆を集めてっ!」


 すると、そんなザグの愚痴に答えるように奈々枝はザグ達を呼ぶ。

「どうした奈々枝っ!」

 奈々枝の声にザグ達はすぐに集まる。

「たった今連絡が!英雄様達はすぐに到着するようです!」

 奈々枝の報告に異世界人達は安心したような顔を浮かべる。

「ちっ、あいつようやく来やがるか」

 そしてザグも心なしか安心したように声をもらす。

「じゃあ俺達はすぐに奴らの後列に移動すればいいのか?それとも先頭に現れて挟み撃ちにでもするのか?」

 康生達が来るということで、ようやくザグ達も暴れられるということで皆やる気に満ちていた。

「いえ、私達はこのままここで待機します」

 ザグの疑問に奈々枝はすぐに答える。

「でもお兄ちゃんの言ったように挟み撃ちするわけじゃあないよ」

「どういうことだ?」

 しかしすぐに奈々枝の発言にザグは眉をひそめた。

「しかし、あいつら後ろから来るんだろ?まさかそれともわざわざ迂回する気か?」

 康生達が後方から追いかけているので、前方で戦うということは迂回するしかないとザグは考えた。

「ううん、迂回する時間ないてないから一直線で来るって言ってたんだけど……」

 とここで奈々枝もどこか語尾が怪しくなる。

「一体どういうことだ?」

 そして当然ザグ達もどういう意味なのか全く理解できないようだった。

「とにかく、英雄様達は敵の正面で戦うって言ってたみたいなの。私もよく分からないけど、私達はそれに合流してって言われてるんだけど……」

 とそこまで奈々枝が口にした瞬間、突然空中の方から大きな音が響いたのだった。

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