第460話 トラック

「分かった。じゃあちょっと危険だが、あれを使おう」

 そう言って康生は何やら機械を取り出した。

「それは?」

 康生が出したものに上代琉生はすぐに反応を示す。

「いや、トラックをいじる時にちょっとおもしろい仕掛けを付けていたことを思い出したんだよ」

「おもしろい仕掛け?」

 康生の言葉を聞いて、上代琉生は何やら嫌な予感がしたようで眉をひそめる。

 またリナさん達も同様に何やらよからぬものを感じ取ったのか険しい表情に変わる。

「それって大丈夫なやつなの?」

 心配になりながらも、エルは恐る恐る康生に尋ねる。

「一応実験では成功はしてるよ。ただこれを使ったらもう二度と走らせることはできないだろうけど」

 そしてやはり危険な予感が的中し、皆はさらにに表情を強ばらせる。

「でも安全面については大丈夫だよ。何度も実験したけどそこだけは安心して」

 すると皆の表情を見て康生は慌てて説明する。

 しかしそれでも一度使えば走れないという情報が、全く安心感を与えてくれないようだった。

「AI、あの機能はすぐにでも使えるか?」

 だけど康生はそんな皆の反応を気にせずに進めようとする。

『はい、準備はできております』

「よし」

 準備ができているということで、康生は改めて皆に顔を向ける。

「いい、よね?これさえあれば多分敵よりも先に異世界の方にいけると思うけど」

 今のままでは間に合わないことは皆は確かに知っている。

 だからこそ康生がこうして案を出したのだが、やはりまだ安心はしていない様子だった。

「康生だから信じたいだけどね。一応聞くけど本当に大丈夫なのよね?」

 そしてエルが最後に、代表して安全を聞く。

「そこについては本当に大丈夫。安心して」

 今度は康生もしっかりと皆の目を見て、真剣に答える。

「そう……。なら大丈夫ね。お願いするわ康生」

「うん、任せて」

 それでも皆は康生のことは信用しているので、素直にその案に乗ることにした。

「よし、それじゃあ各車両にすぐに連絡します。装置を起動させる時は言ってくださいね」

 案が決まったことで、上代琉生はすぐに別の車両へ連絡を飛ばす。

 それを聞いて康生もAIを使って各車両の装置の様子を確認する。

「――うん。大丈夫そう。それじゃあそろそろいくよ。ちょっと衝撃が強いけど我慢してねっ」

 その合図で、トラックから大きな機械音が鳴り響く」

「それじゃあいくよっ!」

 そのかけ声と共にトラックが一気にスピードをあげて地上を駆けていった。

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