第442話 拘束
「いくぞっ!」
時雨さんが火の玉に向かって長刀を振り下ろす。
その瞬間、時雨さんの長刀が淡く光る。
「解放っ!」
一直線に振り下ろされた長刀は火の玉の中へと吸い込まれていく。
しかし時雨さんは動きを止めることなくさらに力を込める。
「いっけぇっ!」
いよいよ火の玉に全身が包まれそうになる中、時雨さんは最後の力を振り絞るように腕を振り上げる。
「はっ!!」
その瞬間、火の玉が真っ二つに斬れる。
「なっ!?」
その光景を見て隊長達が声をあげる。
「いけいけいけっ!」
しかしそれだけでは終わらずさらに長刀を振り回す。
すると先ほどとは違い今度は火の玉が粉々に切り裂かれていく。
「はぁっ!」
そして最後に真横に一直線に切り裂くと粉々になった火の玉が吹き飛ばされる。
「ふぅ……」
そして無事地面に着地した時雨さんは息を整える。
「すまないなリナ。少し力を使ってしまった」
息が整うと背後に振り返ってリナさんに謝る。
「いや気にするな。それにあれは仕方ない」
「ならいいんだが……」
拠点が破壊されずに済んだことをリナさんは把握しているようで、謝る時雨さんに特に何も言いうことはなかった。
「それにしてもやっぱりこの力はきついな、ちょっと使っただけで少し体が重くなった。やはり上代琉生の言う通り使わないにこしたことはないな」
「まぁ、そもそも人が疑似的にでも魔法を使おうとすることが間違っているのだ。どんな危険が潜んでいるのか分からない。そんなものを作ってしまった康生には一度よく言っておかないといけないな」
リナさんは小さくため息をこぼす。
そしてその言葉から先ほどの力はやはり康生の発明のもののようだ。
時雨さんの反応を見るからに、どうやら使用すれば体に負荷がかかってしまうみたいだ。
「し、時雨……お、お前……」
とそこで今まで黙っていた隊長が恐る恐るといったように口を開く。
その表情は恐れや恐怖といった感情が強く出ていた。
「どうしました?」
しかし時雨さんは全く気にしない様子で聞き返す。
「……やはり貴様も異世界人達と同じなのか?それとも我々と同じように手術を……?」
「手術……はよく分からないが、私は普通の人間だ」
「そ、そんなの信じられるわけ……」
しかし先ほどの光景を目にしてしまった隊長達は信じられないようといった様子だった。
「信じられないなら勝手にしろ。だが必ず貴様等達の考えをしっかり改めさせてやるからな。覚悟しておけよ」
時雨さんはそれだけ言って隊長達に無言で近づく。
「リナ、こいつらはとりあえず拘束するんだよな?」
「あぁ、傷のあるものはエルお嬢様の元へ、それ以外は上代琉生の元へ連れて行くぞ」
そうしてリナさんと時雨さんは隊長達を連れて上代琉生の元へと行くのだった。
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