第430話 休憩

「皆さんありがとうございましたっ!」

 康生がリナさん達の元へと戻る。

 移動してからここまでの時間はたったの数分程度。

 その時間で全てを終わらせた康生は素直にすごいが、しかしまだ戦いは終わっていない。

 敵の本隊を見つけていないのだから中盤ですらないといえるかもしれない。

 だからこそ休憩している時間は一切ないのだ。

 そう思ってるからこそ康生はすぐに戦闘準備に入ろうとするが、

「康生っ!お前は一度休憩だ!」

「えっ?」

 戦場へと戻ってきた康生に言い放たれた言葉は休憩しろという命令だった。

「どうしてですかっ!俺はまだやれますよっ!」

 しかし素直に聞く康生ではない。

 実質まだ全然戦える以上、こんなところで休んでいる場合ではなかった。

 それにここで休んでしまえば、リナさん達に負担がかかってしまう。

 だからこそこんなところで休むわけにはいかないのだが、

「ここは我々だけで大丈夫だ。お前は少しでも体力を温存しておけということだ!」

「で、でも……」

 確かに今まで戦い続けで、先ほど大仕事をやってきたばかりだ。

 疲れていないといえば嘘にはなるだろうが、それでもまだ十分戦える。

『リナの言う通りよ。少しの間だけでいいから休んで。その間今の傷だけでも治してあげるからっ』

 と康生を説得するようにエルの声が聞こえる。

 でもエルはエルで負傷した兵士達の治療があるわけで、そこでも迷惑をかけるわけにはいかないが、これ以上何を言っても無駄だと判断したのか、康生は素直に休むことにした。

「じゃあ傷が治るまでですよ」

「あぁ、分かった」

 そう言って康生は城壁の中へと入っていく。

 しかし休憩する前ということで、康生は少しだけ力を解放させる。

「はっ!」

 一直線に放ったパンチはそのまま衝撃波となり、城門へと向かってくる兵士達を吹き飛ばす。

「ありがとうな康生」

 ゆっくりと城門へと戻ってくる康生を時雨さんが迎えてくれる。

「いえ、こちらこそ迷惑かけます」

「ふんっ、気にするな」

 そう言って康生は城門の中へと入り、急遽作られたテントの中へと入ってく。

「あっ、康生っ!よかったまだそこまで大きなけがはしていないみたいねっ!」

 康生を見つけたエルが真っ先に駆け寄ってくる。

「うん、本当は全然大丈夫なんだけどね」

「そんなこと言っても休憩は大事だよ。いつまで続くか分からないんだから。それに今戦っている人達の分はあとで康生が頑張って返せばいいんだよ」

 エルはそういいながら康生をベッドに座らせる。

「それじゃあ少しの間だけどゆっくりしててね」

「分かったよ」

 そう言って康生はわずかな時間、休憩することになった。

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