第176話 一緒に

「――方法を考えて下さい、か。英雄様も前とは変わってしまったね」

 康生の言葉に真っ先に反応したのは上代琉生だった。

 その言葉を聞き、時雨さんも気づく。

 以前の康生なら一人で何でも解決しようとしていた事を。

 少なくとも今まではそうやっていた康生にあまりいい思いはしていなかった、時雨さんからすればそれは嬉しい事だった。

『今回ばかりは俺の力ではどうしようも出来ないから……。だからどうか一緒に考えてくれないか?』

 上代琉生に指摘されながらも、康生は頼み込む。

 本来ならば自分でやり遂げなければならない事。十年経った今でも、やっとこれぐらいの事しか出来ないのかと自分を攻めながら。

「――駄目だよ康生」

『え?』

 すると先ほどまで黙っていたエルが口を開く。

 同時に駄目と言われ康生はひどく混乱し、ショックを受けた。

 しかしそれもつかの間で、エルはさらに言葉を続ける。

「考えて下さいじゃ駄目だよ。本当はそれは皆で考えるものなんだよ。康生がお願いする事じゃないんだよ!」

(お願いする事ではない?)

 エルの言葉の意味を理解出来ず康生はただただ無言になる。

 そして同時にどうすればいいのかと、頭を巡らせる。

「――それでは、康生の案についての議論を始めようか」

 翼の女が進行をする。

『え?』

「そうですね。個人的にはそれぞれのトップ同士が戦うのは理想系かと思います」

 康生が困惑の声を出す中、上代琉生が意見を述べる。

「私もそう思う。それだと少ない犠牲者で済む」

 それに続き時雨さんも発言をする。

「まぁ、戦いにおいて少ない犠牲と効率。これは大事ですからね」

 さらには翼の女までもが意見を述べた。

「じゃあ今から実行案を考えましょうか」

 とエルの発言によって皆は康生の案を実行するために意見を出し合う。

「…………」

 その光景をただ傍観している康生。

 するとそれに気づいた上代琉生がすぐさま顔をあげる。

「――何ぼうっとしているんですか英雄様?これはあなたの意見なんですからしっかり発言して下さいね」

「そうだよ康生」

 エルも続いて顔をあげてくる。

 どうしてだかエルの表情が少し嬉しそうにしているのが見えたが、康生はすぐに頭を切り替えた。

『……一応俺の方で何個がそれっぽい案があるんですけど』

 会議に混じって発言をする。

「じゃあ先にそれを話したまえ。発案者の意見はまず先に言うべきだろうが」

 そんな康生の意見に翼の女はすぐに反応し、康生に発言権を回す。

『わ、分かりました』

 そうして康生達は先の戦闘に備えての会議を進めた。

 最初は難航した作戦だったが、次第に案が増えなんとか実行出来る形まで持って行くことに成功した。

 そして会議終了時にエルが康生だけに聞こえるようにそっと呟く。

「ね?お願いするんじゃなくて、一緒に考えないと。私たちは仲間なんだから助け合わないと」

 と笑顔でエルは言ったのだった。

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