第162話 データ
異世界人達と共に講堂で昼食をとった康生達はそのまま畑の様子を見に行くことになった。
畑はいい感じに育っており、あとは収穫を待つだけのようだった。
その後、夜になり今度は異世界人達と街の人達も交えて夕食をとった。
そうして皆が寝静まる頃になり、康生は時雨さんの家に行こうとしたのだが……。
「――私は反対します」
こうして康生達は翼の女に捕まってしまった。
翼の女はエルと同じベッドで寝ることに反対しているようだった。
「別にいいでしょ?何か間違いが起こったわけでもないんだし」
エルも珍しく反論します。
「あ、あの〜……」
これ以上言い合いとどうなるか分からないので、康生は恐る恐る手をあげる。
「お、俺は今日から自分の工房で寝泊まりするから心配しないで下さい」
「……そうか。なら大丈夫か」
「えっ!康生またあそこで寝泊まりするの?」
康生の提案に翼の女は納得したが、エルはまだ納得出来ていないようだった。
「ま、まぁいいじゃないかエル?」
時雨さんはこれ以上話し合ってもきりがないと思ったのか、エルをなだめる。
時雨さんの言葉でこれ以上何か言ってくることはなかったエルだったが、その顔は納得していない表情で機嫌が悪くなっていた。
「そ、そう事だから行ってくる」
これ以上何かされるのも嫌なので、康生は逃げるようにその場を立ち去った。
「――あっ、康生!」
康生の背中からエルが呼び止める声が聞こえたが、康生はその聞こえなかったフリをしてそのまま走り去った。
「……もう」
康生が立ち去り不満げにため息を吐くエル。
「そんなに一緒に寝たかったのかエル?」
「別にそうじゃないわよ。――ただ、康生と最近よく話しが出来ていなかったら話したいと思っただけで……」
エルが小さく呟いたが、結局そのまま時雨さんと共に家へと向かう事に。
そうしてエルを見送った翼の女もすぐに講堂へと足を進めた。
『――せっかくのお誘いを断ってもよろしかったのですかご主人様?』
「……別にいいんだよ」
康生の耳から突如聞こえたきた機械音に康生はぶっきらぼうに返事を返す。
「それより今日のデータはとっておいたか?」
『それは魔法のデータですか?それならバッチリとってありますが』
命令していたわけでもないが、こうして何も言わずとも康生がしておいてほしいことをしてくれるAIに康生は全幅の信頼をおいている。
「よし、じゃあそれを元に今日は魔法の研究をするぞ」
『――かしこまりました』
そしてAIもまた、康生の言うことを忠実に守る。
「……もっと、強くならないと。もっと強く……」
独り言のように呟きながら康生は夜の街を歩く。
それを聞いているのはAIただ一人。
『…………』
AI自身何かを言いたそうにしているが、結局は何も言わずにただ康生の命令を聞くだけだった。
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