第150話 手伝う

 現在は地下都市中央にある広場。

 結局、時雨さんが地下都市に入って行くと、数分と待たずに再び扉が開かれた。

 こんなに早く街の人達が了承してくれたのはきっとエルのおかげだろう。

 そうしてあっさりと異世界人達が入ることを了承してくれたことに、翼の女をはじめ異世界人達は戸惑いの表情を見せていた。

 しかしエルが率先して歩くことで、多少なりとも皆の不安が消えていっているように康生は思った。

 それから時雨さんに案内されるままこうして中央の広場へとやってきたのだ。

「まずはようこそ我々の地下都市へ」

 異世界人達の正面に立った時雨さんが一礼をする。

 時雨さんの背後には街の人達と兵士達がいる。

 形としてお互い向かい合う形となっている。

「――招待感謝する」

 時雨さんを見てか、翼の女も礼儀として軽く頭を下げる。

「…………」

「…………」

 それからしばし無言の時間が流れる。

 それもそうだ。お互い今まで敵として戦っていた存在だ。それがこうして目の前に、しかも友好な関係をとろうとしている。

 誰だって戸惑い、どうすればいいか分からずにいる。

 その結果がこの無言なのだ。

 しかしだからこそ、この中で唯一勝手が分かっているであろう人物が口を開く必要がある。

 そして今回でいうその人物とは……。

「――まずはお互いこれからしばらく生活していくわけだから……仲良くする意味も込めて交流会を開きましょう!」

 エルが手を叩き注目を集め、同時に交流会の提案をする。

 確かに交流会という手を使えば多少はこの場を和ませることが出来る。エルはそう考えたのだろう。

「交流会か……。確かにそれはいいな。よしすぐに準備させよう」

「はっ!分かりました!」

「私達も手伝うよっ!」

 それから兵士達だけではなく、街の人々も総出で交流会の準備が進められた。

 交流会と言っても、簡単な料理と飲み物がでるだけでそこまで豪華といえるわけではない。

 しかしそれでも街の人々は精一杯、異世界人達をもてなす気持ちで準備を始めた。

「――指揮官。我々は一体どうすればいいんでしょうか」

 そんな光景を見た異世界人の一人が翼の女に訪ねる。

「…………」

 しかし翼の女は何も答えない。否、答えることが出来なかった。

 異世界人達にとって人間とは敵である以外の何者でもない。

 何者でもないはずなのだが、こうして今、目の前で異世界人達の為に人間が動いている姿を見て、今までの固定概念が崩されたような感覚に襲われていた。

「――一緒に手伝いましょ?」

 そんな異世界人達の所へエルがやってくる。

「私達はこれからお世話になるんだから、少しぐらい手伝わないと」

「……手伝う?」

 翼の女は怪訝な表情をする。

「そう。手伝うの」

 エルはそう言って翼の女に斧を手渡します。

「これは……?」

「今から薪を斬るらしいから皆で手伝ってあげましょ?」

「薪?」

「そう!ほら早くっ!」

「ちょ、ちょっとお嬢様っ!」

 そうしてエルの誘導の元、異世界人達も作業に混ざったのでした。

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