第146話 反論
「結局今と変わらないじゃないですか?」
翼の女の言葉にエルは押し黙る。
全ての言葉が正しいとはエルは思っていない。
しかし大部分である、人間が最弱の種族となり、虐げられることに対してはエル自身も正しいとさえ思ってしまっている。
なぜなら人間は魔法を使うことが出来ない。
魔法を使うことが前提の我々の戦いでは、もはや人間が適うわけがないのだ。
だからこそ、人間達が私たちと同じように種族分けされるとなれば、たちまち滅ぼされかねない。
そのことについてもエルは考える。
何か他にいい方法はないかと。
――――あった。多少乱暴な意見になるが確かに、翼の女の言葉に対抗する言葉があった。
「――人間は決して弱くありません。それは康生が示してくれています」
そう。康生という存在は今や異世界人達の中でもとても大きな存在となっている。
人間でありながらドラゴンを退治し、翼の女とも互角以上の戦いを繰り広げた。
そのことからも康生の実力はとてつもないものだ。
だからこそ人間という種族とは弱いとは言わせない。
エルはそう反論し返す。
「……あの子供は本当に人間なのですか?」
しかし翼の女はすぐに反論する。
それもそうだ。翼の女は、康生が魔法を使った瞬間、すぐに人間ではないことを疑っていた。
それに異世界人達だって、康生が人間ではないと心の中では思っているはずだ。
だが、エルはそこに突破口を見出し、さらに攻める。
「本当に人間じゃないと思っていますか?魔法を使う人間。本当に絶対に存在しないと言えるんですか?」
「……確かに絶対とは言えませんね」
翼の女はここでようやく言葉を詰まらせる。
半ば強引な意見だが、今康生という存在は人間か異世界人が分かっていない状況だ。
だからこそ、エルはその状況を利用した。
康生をあくまで人間と言い張ることで、人間の力を示し、私たち種族間の争いでも十分に戦っていけること、対等な立場であることを示した。
「――本当に人間と仲良くなれるとお思いで?」
これ以上、康生についての話しをするのが無駄だと判断した翼の女は話題を変えてくる。
「私はそう思います。だって私は人間の街で、人間の人達にたくさんよくしてもらいました!だからこそ私たちも人間と共に手を取り合える時が来るのです!だからどうかお願いですっ!私とどうか一緒に来て下さいっ!」
エルはそう言って深々と頭を下げた。
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