第127話 決心

「――よし。皆の者準備はいいか!」

 地下都市への入り口がある地上で、全ての兵士達が隊列をなして並ぶ。

 皆それぞれの武器を手に、武装機械が搭載された鎧に身を包む。

 その最後列には大きな台が建造されており、上には数人の兵士と都長が立っている。

 都長はそこから兵士達に話しかけていた。

「今回の戦い。これはただ異世界人達を退ける戦いではない!」

 最初にこの話しをした時は当然兵士達は皆、いい表情を示さなかった。

 しかしエルの説得があり、また先の戦いでエルに治療してもらった者や、軽傷で済まされた者などを筆頭に、だんだんと賛同する者が現れた。

 隊長達を説得させた時と同様で、エルにはもしかしたらそういう才能があるかもしれない。

 そんなエルは兵士達が並ぶ戦闘に立っており、横には時雨さんと康生が並んでいる。

 自ら最前線へと挑む姿勢からも、兵士達を納得させた要因となった。

「今回の作戦は正直、成功するかは分からない。しかしそれでも今回の作戦はいずれ人類史に残るであろう大きな事だ!各自その事を頭に入れて今回の作戦に臨むように!」

 都長のかけ声で兵士達の指揮があがる。

 兵士達をエルが説得し、時雨さんは都長らと隊長と共に戦略を練った。そして都長は兵士達の一つにまとめあげる。

 康生の一つの考えがこれほどまでに人が動いてくれた。

 その事を康生は頭の中にしっかりと入れておく。

 同時にこの作戦を必ず成功させると誓う。

『……やはり緊張しているみたいですね』

 そんな中、康生の耳に声が響く。

「当たり前だろ」

 声が聞こえた瞬間、康生の表情が少しだけ明るくなる。

「それにしても久しぶりにお前の声を聞いたよAI」

『当然です。私はあの時あなたと約束しましたから』

 あの時。AIが言うそれは康生が、あの戦いの後に一人部屋に籠もった時の事だ。



「AI。お願いがある」

『なんでしょうかご主人様』

 ほのかに明るい部屋で、康生はスマホに向き直る。

「今回の戦い。AIの力が無かったらきっと死んでいた」

『そうでしょうね』

 AIはただ淡々と言葉を返す。

「本来なら、俺一人でやらなきゃいけない場面だった」

『まぁ、確かに私も少し過保護になっていたかもしれません』

「だからお願いだ。これから先。本当にピンチになった時だけ、その時だけお前の力を貸してほしい」

 その時だけ。つまりは本当のピンチ以外はAIの力は借りないという事だ。

 そんな康生のお願いを聞いたAIは、機械ながらにどこか嬉しそうにしながら答える。

『分かりました。ご主人様のお願いなら仕方がありません』

 こうして康生はAIの力を借りることをせずに、一人で生き抜こうと決心したのだった。

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