第126話 案

「異世界人達と戦わずに済む……、いえ異世界人達と協定を結ぶ提案です」

「異世界人と協定……だと?」

 都長はさらに眉を細め、訝しむように康生を見つめる。

 康生の隣ではエルと時雨さんが驚きの表情で見つめている。

 部屋の中の視線を集めている康生は、それでも堂々とした態度でさらに続ける。

「はい。だから是非やらして下さい」

 最後に康生は頭を下げる。

「――私からもお願いします」

 康生が頭を下げると、エルもすぐに頭を下げる。

「私も」

 時雨さんも二人に合わせ再度都長に頭を下げる。

 都長は流石に康生の提案が気になったのか、今度は無視するわけでもなく、体を向ける。

「――一応聞かせてもらおう」

 そうして康生は自身の案を語った。




「――なるほどな」

 提案を聞き終えた都長はしばらく熟考する。

「すごい……」

 エルはといえば、康生の案を聞き、希望の眼差しで康生を見つめていた。

 それならば異世界人達と協定を結ぶことが出来る。そう思ったのだろう。

 そしてそれは都長も同じだったようで、しばらく熟考した後にゆっくりと頷いてみせた。

「分かった。少年の案にのろうじゃないか。それにもし失敗した場合も、私達が被害を受けることはない。――ふっ、中々いい案じゃないか」

「ありがとうございます」

 都長から案を採用され、康生はホッと息を吐く。

 緊張が解けたからか少し足下をふらつかせる。

「だ、大丈夫か康生?」

 そんな康生を時雨さんがしっかりと支える。

「す、すいません。急に緊張が解けたみたいで……」

 そんな様子を見て都長は顔に笑みを浮かべる。

「君がこの作戦の要なんだ。しっかりしてくれよ?」

 そう言って笑ったのだった。

「は、はい!」

 康生は元気よく返事をし、それから作戦の細かい部分をつめたのだった。




「目的地はまだなのか?」

「はっ。もうしばらく掛かります」

 ここは地上。

 異形の姿をした生物が隊列をなしてまっすぐ足を進めている。

 その最後尾。御輿のような物の上に乗る一人の女性は大きくため息をつく。

「もっと早くせぬか!」

「「「「はいっ!」」」」

 その女性は自分を担いで歩いている者達に声を荒げる。

「――早く。お嬢様を救わなければ」

 女性は小さく呟いて、遠くの空を眺めたのだった。

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