第112話 目印

 結局あれからいくら考えようがいいアイデアは浮かぶことはなかった。

「……そろそろ着くか」

 時雨さんが言うと前方にならやら大きな塔のような物が見えてきた。

「あれは何?」

 その塔を見つけたエルもすかさず訪ねた。

「あれは地下都市を見つけるために設置された塔だよ。あれを目印に私達は地下都市を行き来している」

 なるほど。と康生は納得する。

 確かに地下都市に入るためには地面から出現する扉から入るしかない。

 しかも時雨さんの場合だと、何もない地上を叩くことで地下都市の扉を開けさせる方法だったので、より目印は必要だということだ。

「あれ?でも時雨さん達の所は何も目印がなかったですよね?」

 康生は地下都市に入る時の事を思い出す。

 周辺には目の前のような高い塔はなく、全く何もない所だった。

 では一体どうして時雨さんは出口部分を見つけることが出来たんだ?

「あれは機械を使ったんだよ。機械を使って出口がある場所を発見したんだよ」

 という事は地下都市によって、出口を見つける方法はそれぞれだということだ。

「さぁ、ここからは私が先導しよう」

 と一人の隊長が前に出てきた。

 恐らく今向かっている地下都市に所属している者なのだろう。

 だからこそ時雨さんはすぐに位置を移動し、隊長に先導を任せた。

 そしてそのまましばらく歩くと隊長が足を振り上げて思い切り踏み込んだ。

 そのまま立ち止まったので康生達もそれに合わせて立ち止まる。

 すると時雨さんの時と同じように前方の地面が揺れて扉が現れた。

 しかし時雨さんの時とは違ってその扉の中に?大勢の兵士が待ちかまえていた。

「お帰りなさい隊長。それで……一体どのようなご用で?」

 兵士の中の一人が前に出てくる。

 そんな兵士達の歓迎を見て康生は少しだけ警戒をする。

 予想通り兵士たちは康生を警戒している。そして康生達と一緒にいる自分達の隊長でさえも。

 まぁ、昨日あれだけの戦いをしたのだから仕方はない。

 これからどうするのか。と康生はしばらく隊長を観察する。

「都長と話しをさせてくれ。我々に有益な話しがある。この事を都長に伝えてくれれば構わない」

 とそれだけ言うだけだった。

 事情を話すわけでもなく、ただ都長と話しをさせろと。それだけ言って隊長は黙り込む。

 そのまま兵士はどうしようかとオロオロとし始める。

 しかし、しばらくすると兵士達の中が声が響く。

「いいでしょう。話しを聞きましょう」

 瞬間、兵士達の集団が二手に分かれて一本の道が出来る。

 その道をゆっくりと歩きながら一人の女性が現れたのだった。

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