第107話 遊びに

「さて、じゃあ出発しようか」

 早朝。朝日がまだ完全に登り切っていない時間帯。

 しかしそれでも康生達は朝食をとり、出発しようとしていた。

 時雨さんと隊長達は流石兵士という感じで、眠そうにしていたりだらけている様子は全く無かった。しかしエルと康生は未だ眠い目をこすりながら頑張ってついて行く。

 特に康生は昨晩遅くまで武器の使い方を習っていたので余計に眠い。

 とはいえ、武器の使い方を教えてくれた時雨さんと隊長達が元気一杯なのだから何も言えない。

「こんなに早く出発しなくてもいいんじゃないの?」

 エルが時雨さんの所へと行き、まだ眠たいことを訴える。

「昼になると異世界人の活動が活発するから少しでも早い方がいいんだよ」

 とそんなエルに早く起きた理由を説明する。

「確かに私達もこんなに早くは起きないけど……」

 それもそうか。と康生も納得する。

 しかしそれと同時に康生の中である疑問が浮かぶ。

「異世界人はこの地上で何をしてるんです?」

 だから康生はすぐに時雨さんに訪ねた。

 しかしその問いに答えたのは時雨さんではなくエルだった。

「私達はここに物資を探しに来てるんだよ。この世界の物は私達の世界にないものばかりだからね。それでも今は昔みたいに人間と大きく戦うつもりはないから、少しは慎重に動いているようだけど」

 そうしてエルがあっさりと異世界人の事情を説明する。

「確かに最近、異世界人を見ないと思ったらそういう事だったのか……」

 隊長達はエルの言葉を聞き頷いた。

「それでも偶にこっちに遊びに行く子もいるから困ってるんだよ」

「遊びにって……もしかしてこのまえのドラゴンの事?」

 エルの言葉を聞いてふと思いだした康生は呟く。

「ドラゴンがこっちに来ることは珍しいけど、そういう事」

 やっぱりドラゴンは珍しいのか。と康生は改めてドラゴンと戦った事を思い出す。

「そういえば……」

 と康生とエルの会話を聞いていた隊長が思い出すように呟く。

「昨日、ドラゴンがこちらに渡ってきたという情報があったな。その後、ドラゴンは帰って行ったという情報も。どういう意図があったのか分からずしばらく混乱していたよ」

(あのドラゴンはちゃんと帰っていったのか)

 隊長の話しを聞いて康生は一安心した。

 なんてそんな話をしながら康生達はゆっくりと足を進めていった。

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